武田薬品会長の功罪、住商と子会社の暗闘、郵政株を巡る異変、パナの後継者争い

丸の内コンフィデンシャル

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★武田薬品会長の功罪

 武田薬品工業の長谷川閑史会長が6月下旬の株主総会で退任し、相談役に就く。公式には「クリストフ・ウェバー社長CEOによる経営が軌道に乗ったため」とされているが、「指名委員会から引導を渡された」(証券アナリスト)との見方がもっぱら。皮肉にも長谷川氏の武田薬品会長としての最後の仕事は、東京電力ホールディングスの指名委員会委員長として廣瀬直己社長を解任し、新たな会長に日立製作所の川村隆名誉会長を迎え入れることだった。

 長谷川氏は2003年、創業家の武田國男氏の後釜として社長の椅子に座った。「武田からTAKEDA」を旗印に、老舗会社のグローバル化を推進。糖尿病治療薬アクトスや高血圧治療薬ブロプレスなど収益を上げてきた商品が次々と特許切れとなる危機を乗り切るため、M&Aで海外市場の開拓に注力した。2008年に米ミレニアム・ファーマシューティカルズを約8900億円で、2011年にはスイスのナイコメッドを約1兆1000億円で買収した。だが期待した新薬は出ず、「2兆円をドブに捨てた男」と言われた。

 また2014年には英製薬大手グラクソ・スミスクライン出身のウェバー氏に社長を譲るなど、外国人を複数経営幹部に招き入れた。だが急速なグローバル化や巨額のM&Aは創業家やOBの反発を招く。2014年の株主総会は、買収や外国人の新社長就任について事前に質問状が出される事態に陥った。

 大型M&Aを繰り返したが、いまだに武田は世界の薬品会社のトップ10に入れておらず、長谷川氏就任前の、売上高営業利益率30%を誇った高収益会社の面影はもはやどこにもない。長谷川氏が敷いたグローバル化路線は今後、果実をもたらすことになるのか。それとも負の遺産として武田を長く苦しめることになるのだろうか。

★住商と子会社の暗闘

 住友商事(中村邦晴社長CEO)と有力子会社SCSK(谷原徹社長)がここ数年、水面下で繰り広げてきた暗闘が収束に向かう兆しだ。最大の焦点だった中井戸信英・SCSK相談役が身を引く方向となったのである。

 発端は2007年に決着した住商の社長レースだ。岡素之氏の後任人事を巡り、有力候補とされていたのが機械畑を歩み、当時副社長だった中井戸氏。だが、主流の鉄鋼畑で1つ年下の加藤進氏(故人)に直前で追い抜かれ、一敗地にまみれた。結局、2009年に中井戸氏は失意のまま住商情報システムの会長兼社長に転出することとなる。

 中井戸氏は新天地で気を吐いた。住商情報システムは2年後にCSKを吸収合併、SCSKに生まれ変わるなど攻めの経営に転じた。売上高は2倍以上、純利益も7倍以上に急伸した。一方、中井戸氏は残業を極力減らすなど「健康経営」を標榜、時の経営者としても持て囃された。

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source : 文藝春秋 2017年06月号

genre : ビジネス 企業