築地か豊洲か 銀座鮨職人の意見

一志 治夫 ノンフィクションライター
ニュース 社会 政治

 市場に長年通い続ける目利きの声に耳を傾けよ

豊洲市場 ©時事通信

 

「年も年だし、築地がなくなるのと一緒に引退しようと、僕はもう決めたんですよ。築地には、小僧の時代を入れたら55年通ってきたけど、商売は築地市場とともに一切終わりということです」

 築地市場の豊洲への移転を受けて、10月いっぱいで引退を決意したのは、ミシュランの常連「鮨水谷」の水谷八郎だ。来年には古希を迎える水谷は、銀座「すきやばし次郎」で長らく小野二郎の右腕として働いたのち、「次郎よこはま店」店主を経て同じく銀座で「鮨水谷」を開き、食通たちをうならせてきた握りの名手である。

「10年以上前から築地が移転することは聞いていたんです。もし築地が残るなら、もう何年かは商売を続けていましたけどね。豊洲に移ったほうがいいことがあるっていうなら別だけど、いい話なんて何ひとつ聞かないからね。有毒ガスが出るようなところに移ったら、あとで必ず何か病気が出たりするよ。本当に食の安全を考えたら、都の人間は責任重大だと思う」

 水谷の思いは、都内の鮨職人たちの怒りを代弁している。安全安心が絶対の鮨の世界だからこそ、彼らの怒りと不安は大きい。

 豊洲市場の開場日は11月7日とされ、仲卸業者(仲買人)も鮨屋も「御上には逆らえない」とばかりに準備し始めていた。鮨屋では、引っ越し日に当てられた11月3、4、5、6日の前後に夏休みをずらして入れたり、休みに対応したネタの仕入れ計画を立てていた。

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source : 文藝春秋 2016年11月号

genre : ニュース 社会 政治