米機密文書が予言するTPP交渉の結末

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「国難に遭遇することになるぞ」米国の脅しに日本はどう立ち向かったか──

オバマ大統領 ©時事通信

 環太平洋連携協定(TPP)をめぐる日米交渉は「妥結もせず、決裂もせず」という状態から、四月の日米首脳会談を経て「合意は間近」という段階に入ったようだ。本格的な日米通商交渉は、一九九三年に始まった日米包括経済協議以来。久しぶりの経済をめぐる対立ということもあり、メディアの扱いも大きいが、両国当局者のガードは固くその中身はなかなか表に出てこない。ただ、TPP交渉を読み解くヒントはある。それは戦後の日米通商交渉を思い起こしてみることだ。

 振り返れば、経済問題は両国にとって常に大きな懸案だった。繊維に始まり、半導体や牛肉など個別分野の市場開放をめぐる話し合いから日米構造協議や日米包括経済協議に至るまで、七〇年代以降の両国関係は経済摩擦を抜きにして語れない。

 米側は一体どんなことを考えながら日本との交渉に臨んでいたのか。どのようにして対日関連の重要政策を決めていたのか。対外交渉には、時としてその国の思考パターンが色濃く現れる。過去のケースを検証することで、TPP交渉における米国の強硬な姿勢の背景も読み解けるのではないか。

 それを紐解く鍵となるのが、当時機密とされた米政府内部の公文書だ。そこには、米国の対日観はもちろん、戦後の日本経済を主導した政治家や官僚の思考が生々しく記録されている。加えて、外務省や旧大蔵省などから公開される日本側の公文書を併用すればより立体的な理解ができるだろう。例えば、日本大学の信夫隆司教授は、ワシントン近郊の米国立公文書館などで数万頁に上る米側文書を集め、外務省などで公開された資料を組み合わせて、繊維交渉の全貌を明らかにしている。

 歴史は繰り返す――。米国の機密公文書は「トップ・シークレット(極秘)」であろうと「コンフィデンシャル(機密)」であろうと、安全保障に関する例外を除き、作成から二十五年経過した段階で原則として公開される。筆者が情報公開法で得たものも含め、これまでに入手してきた様々な米側の記録を用いて、一部日本側の資料で補いながら、これまでの日米交渉を改めて見直してみたい。

キッシンジャーからの検討課題

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source : 文藝春秋 2014年07月号

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