外出を控えめに、家でじっくり本を読む、そんな夏です。
まずはターコイズカラーのカバーが印象的な『こんぱるいろ、彼方』。
主人公は40代半ば、スーパーの総菜売り場でパートをしている主婦真依子。彼女には子どもたちに話していない秘密があります。それは、自分がベトナムからやって来たボートピープルであるということ。でも5歳で日本に来たため、彼の地での生活はほとんど覚えてはいません。
そんななか、大学生の娘が友だちとベトナム旅行に行くことになり、事実を伝える決断をします。娘の「もっと知りたい」という思いに後押しされるように、これまで積極的に知ろうとしていなかった自らのルーツに徐々に触れていくのですが……。
ひときわ鮮やかな印象を残すのは真依子の母が若かった頃のベトナムでの暮らしぶり。仲睦まじい家族の、平和で満ち足りた日々! こんぱるいろの海に昇る朝日を、街の人たちが海に浸りながら見る場面の美しさに胸が詰まります。
この小説でボートピープルが決して遠い場所のものではないことに気づかされました。国の混乱によって、誰の身にも起こりうることなのだと。学びたい、知りたいという真依子の娘の存在がこの一家の未来を明るく照らしているようです。
『ぼくだけの山の家』はアメリカで読み継がれてきた名作。刊行は1959年。ニューヨークに住む少年が、たったひとりでキャッツキル山脈の森に行き、1年を過ごす物語。
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source : 文藝春秋 2020年9月号