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文藝春秋 電子版は「第二の創刊」です

編集長ニュースレター vol.1

新谷 学 (株)文藝春秋 取締役 文藝春秋総局長
ニュース メディア 芥川賞

「文藝春秋」は今からちょうど100年前、作家・菊池寛によって創刊されました。

「私は頼まれて物を云うことに飽いた。自分で、考えていることを、読者や編集者に気兼なしに、自由な心持で云って見たい」

 菊池寛の「創刊の辞」はこう続きます。

「友人にも私と同感の人々が多いだろう。又、私が知っている若い人達には、物が云いたくて、ウズウズしている人が多い。一には、自分のため、一には他のため、この小雑誌を出すことにした」

 ここに出てくる「友人」は芥川龍之介や直木三十五で、いずれも「芥川賞」「直木賞」にその名を残しています。「若い人達」は例えば小林秀雄や川端康成です。

 そうした菊池寛の周囲に集まる文士たちのお陰で、28ページの「小雑誌」は順調に育ち、最新の2023年新年特大号では600ページを遥かに超えます。

 そして創刊100周年を契機に、「文藝春秋」は本格的にデジタルに挑戦します。

 12月1日にスタートする「文藝春秋 電子版」では毎月の雑誌記事はもちろん、10年3000本以上のアーカイブ記事が読み放題となります。

 編集部がとりわけ力を入れているのが、月10本の配信を予定しているオンライン番組です。これまでにも東浩紀さんと小泉悠さんとの対談などは、大きな反響を呼びましたが、こうした過去の番組も含めて見放題です。会員の皆さまはライブで番組を視聴していただけるだけでなく、登壇者に質問することもできます。

 私は創刊100周年に際して、「目覚めよ! 日本」というモットーを掲げました。

 外交安全保障、国家財政、エネルギー、少子化、象徴天皇制など、この国の根幹にかかわる大切な問題を、もうこれ以上見て見ぬふりをせずに真正面から議論する。 2021年11月号では財務事務次官だった矢野康治さんの「このままでは国家財政は破綻する」が大きな波紋を呼びました。今後はそうした刺激的な論考が誌面を飛び出して立体的に展開されるわけです。

 ポリティカルコレクトネスが声高に叫ばれ、メディアの自主規制が常態化している時代ですが、本誌の周りには今も「物が云いたくて、ウズウズしている」人がたくさんいます。

 実は菊池寛は創刊号の編集後記にこんなことも書いています。 「いろいろな人々から悪口を云われても、大抵は黙っていた。が今年からは、自分に対する非難攻撃には、せいぜい、この雑誌で答えたいと思う」

 菊池寛の創刊の精神をオンライン上でも引き継ぎ、今後も自由な心持で発信を続けていく――。「文藝春秋 電子版」は編集部にとって、第二の創刊でもあるのです。

 皆さまの議論への参加を心待ちにしています。

「文藝春秋」編集長 新谷 学

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

genre : ニュース メディア 芥川賞