萩本欽一 浅草のハギキン

101人の輝ける日本人

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数多くの人気番組を抱え、80年代には「視聴率100%男」の異名をとった萩本欽一(81)。新進コメディアンの彼に構成作家として出会った作家、小林信彦氏が寄稿した。

萩本欽一氏 ©文藝春秋

 1965年ごろといえば、ざっといって、60年近く前の話である。

 テレビはさっぱり面白くなかった。日曜日の夕方に、30分ずつやる「てなもんや三度笠」(TBS)と「シャボン玉ホリデー」(日本テレビ)は、時間が続いているせいもあって、必ず見る。だが、それ以外にも見るものが出てきた。東京12チャンネル(今のテレビ東京です)の「ダニー・ケイ・ショー」である!

 ダニー・ケイの映画は最盛期ほどではないが、作ることは作られていた。しかし、ひところほど面白くない。その点、新しいテレビ・ショウは面白い。それで、私は和田誠さんと電話で話すことにした。こういう話がすぐに通じるのも和田誠さんしかいなかった。

 が、テレビ界にはもう1人、ダニー・ケイ・ショーに反応した大物(おおもの)がいた。「光子の窓」を成功させて〈賞はとるが視聴率はとらない〉と噂されていた、日本テレビの井原高忠ディレクターである。

小林氏 ©文藝春秋

 ある日、井原さんから電話がかかってきて、坂本九で大衆的な番組をやるから、手伝ってくれとおっしゃった。それも、新番組をやる理由がすごい。ダニー・ケイ・ショーのように複数の放送作家の名前をずらりとテロップで出したい、というのである。これも三井家の分家に当たる井原さんでなければ考えつかないことだ。

 いろいろあって、この番組「九ちゃん!」の作家に決まったのは若い河野洋(「シャボン玉ホリデー」の作者)、城悠輔(「サンデー志ん朝」の作者)、井上ひさし(「ひょっこりひょうたん島」の作者)、私の4人で、私は別としてもすばらしい集団になった。この4人が毎月2回、都内の某ホテルに入り、ひと月分の台本を書く。井原さんはそれをシッタゲキレイする——というわけである。そんな現場には立ち会いたくない——と考えるのがふつうだが、自分のギャグのセンスが、4人の作家とくらべてどんな水準にあるだろうか、という興味で、日劇出演の合間をぬって、4人がいたホテルに現れた人がいる。成長期の萩本欽一である。

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source : 文藝春秋 2023年1月号

genre : エンタメ 芸能 テレビ・ラジオ