グーグルがテレビCMを打つのは日本ぐらいといわれる。好敵手ヤフーの存在ゆえだ。1996年の創業からヤフーを率いた井上雅博(1957〜2017)の型破りな発想を後継社長を務めた宮坂学氏が語る。
「インターネットとケンカしてもムダだよな」とよくいっていた。
今や決済、車の運転などあらゆる面でネット化が進んでいるが、こうなると20年以上前から見抜いていた。起業家というより、インターネット産業を日本で興した人である。
「アイボール(目玉)トラフィックをどう集めるかが死活的に大切で、金もうけはその次」ともいった。
ではどう集めるか。私が入った97年、ネットユーザーは約100万人。
「次にネットにつなぐ100万1人目から『何をすれば?』と聞かれた先行のユーザーに『とりあえずヤフーにつなげ』と口にしてもらえるようになろう。とりあえず、が大事なんだ」
週1回でなく毎日見てもらうにはどうするか。派手なキャンペーンは信用せず、実践的に達成するやり方を考え続けた。新聞に毎日載っていてネットにないものは全部持ち込もうといってニュース、天気、プロ野球、株価といったものを取り込んだ。
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source : 文藝春秋 2023年1月号