生活をとても愛憎して岩のとかげに秋のつめたさがある
驟雨という神のかかとが砂浜を踏みしめていく朝の奥では
さよならのないさよならがあることの窓に楓は張りつく、濡れて
金平糖のやさしいトゲに晩秋の、いえ、冬の陽は留(とど)まっている
書影。書影がみな魚影に変わるからそしたら海の底の図書館
かなしいのぜんぶ予告編だったらいい雪舞うハッピーエンドに向けた
遠くからは細部が見えず、近寄ると全ては見えず。それが恩寵
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source : 文藝春秋 2023年1月号