海外から米国を目指す学生は、10年前と比べ約2倍に激増している。ハーバード大における2012年の学部出願者数は3万4302人。2022年には6万1220人と、2倍近く増加し、合格率は6%から3%にまで低下した。世界中のエリートが繰り広げる競争は、グローバル化の進展とともに激化する一方だ。
私が代表を務める「Crimson Education/Crimson Global Academy」日本校では、年間150〜200人の受験生全員を海外の大学に合格させ、ハーバードにも毎年合格者を輩出している。
彼らはなぜハーバードを選ぶのか。ハーバードに代表される海外トップ校を目指す日本の学生層は、大きく4つに分類される。1つは「グローバル型」。帰国子女など、海外教育を受けて育ち、親も海外のキャリアを歩んでいるような場合には、海外進学は当然の選択肢となる。2つめは、「旧来型」。海外経験はなく、東大を目指して来たが、本当にやりたいことは東大ではできないことに気付いた場合だ。3つめは「悲観型」。少子高齢化や経済縮小などからくるある種の「危機感」から、圧倒的に成長できる環境でのキャリア構築を志向する層だ。最後は、「楽観型」。上に挙げたような計算的・打算的選択ではなく、海外の人と触れ合う経験を通して単純に「楽しい」からとの理由で選択する人たちだ。
両大学の教育予算を比較すれば、そこには圧倒的な差が存在する。東大の場合は学生数約2万7000人に対して支出は約2000億円。ハーバードは東大より少ない学生数約2万人に対して5500億円を投じている。結果として、ノーベル賞受賞者が東大からは9名が選ばれているのに対し、ハーバードは161名と、大きな乖離が生じている。
あらゆる分野でパラダイム・シフトが起こり、人間の仕事の多くがAIに代替されると言われる中で、社会が求めるソフトスキルも変化している。リーダーシップ、批判的思考力、クリエイティビティは、ほとんどの場合、多様性が担保された環境でなければ身に付かない。世界中から優秀な人材が集まるハーバードでは「質の高い多様性」が担保される。そうした環境で学ぶことで、これからの不確実な時代を牽引するスキルを育むことができるのだ。
合格者は韓国の3分の1
ますます多くの学生がハーバードを目指す世界潮流の中で、残念ながら日本の教育は立ち遅れている。
現在、ハーバードに在籍する日本人学生の数は14名。隣の韓国からは20名だ。人口が我が国の4割であることを考えれば、人口比にして3〜4倍の学生を送り出しているのだ。日本でも、目指す学生自体は増え続けている。志望者数の増加が合格者数に直結しないのは、日本の教育が合格レベルに達していないことの証左だろう。
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