他人の土地を勝手に転売し、莫大なカネを騙し取る「地面師」。五反田の土地取引を巡って、大手住宅メーカーの積水ハウスが約55億円の被害に遭った事件も記憶に新しい。ブラック企業の不動産営業マンを描いたデビュー作『狭小邸宅』、マルチ商法の裏側を取り上げた『ニューカルマ』など、現代社会の暗部を書き続けてきた新庄耕さんが、今回題材に選んだのは、その地面師たちだ。
「この情報化社会の中で、積水のような大企業が、“なりすまし”という、非常にアナログなやり方で一杯食わされた事実は、とても印象的でした。ただ、報道を見ていくうちに、地面師たちの素性やその手口にも興味を覚えたんです。なぜ彼らはここまでして人を騙すのか。逆に騙されてしまった被害者の心理にも同じくらい思うところがあった。そこを掘り下げていくことで、騙す側と騙される側の人物造形が見えてきた気がします」
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source : 文藝春秋 2020年3月号