上原氏(撮影・松山陽子)
全国民の8人に1人がうつ病、うつ状態とも言われる現代社会。心療内科に通い続けても、一向に症状が改善しない患者は少なくない。大宅賞受賞作「日本の路地を旅する」をはじめ、被差別部落を巡るノンフィクションで評価を得てきた上原善広氏も、その一人だった。執筆活動の一方で、自殺未遂を3度重ね、断薬を志すまで1日あたり5〜8種類の向精神薬や睡眠薬を飲み続けてきたという。
「2010年に躁うつ病の一種、『双極性障害Ⅱ型』と診断されました。最初は納得して薬を飲んでいたんですが、5、6年経つにつれ、おかしいと思うようになった。取材中にもかかわらず、眠気が尋常でなかったり、以前より明らかに症状が悪くなっていたんです。主治医に相談すると、今度は『統合失調症』に診断が変わった。後に分かったことですが、長年薬を飲んでいると、幻覚や幻聴など統合失調症の症状が出るようになるそうです。私のようにそうした症状が出ていなくても、治りにくいと判断されると、病名が変わったりする。記憶が曖昧だったので昔のカルテを取り寄せて調べてみたら、3度の自殺未遂も投薬治療を始めてから起こしていました。結果的に薬が良くなかったのではないか。疑問が一気に噴出し、断薬したいと思うようになったのです。それが16年末のことでした」
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source : 文藝春秋 2020年9月号