1922年(大正11年)に創刊された日本最古の総合週刊誌「週刊朝日」が5月末であっけなく、休刊すると知り、しばらく虚脱感に襲われました。東海林さだおさん、林真理子さん、田原総一朗さんら週刊朝日が誇る長寿連載が途切れてしまう寂しさと、今も編集部で働く編集者、記者らスタッフの顔を思い浮かべると胸が疼きました。
101年の歴史のうち約15年間、同編集部に在籍した不肖、私は最後から2番目となる46代編集長を令和が始まる直前の2019年4月から2年間、務めました。翌年1月に新型コロナウイルスが来襲、パンデミックの中、安倍政権の終焉、韓流特集などを組み、座礁しないよう無我夢中で舵を取りましたが、部数減を止められませんでした。週刊朝日で2013年、連載した稲盛和夫氏に「リーダーの器以上、組織は大きくならない」と教わりましたが、ひとえに力不足でした。
編集長を退任する直前、「週刊朝日にはネットメディアにはないレガシー(遺産)がある。うらやましい」というYahoo!幹部の言葉を思い出し、そのレガシーを生かすべく、21年2月から4週連続で99周年特集を仕掛けました。1980年代に名物コラム「週刊村上朝日堂」を連載した村上春樹さん、1990年代にベストセラー「遺書」を生み出した松本人志さんらをインタビュー、瀬戸内寂聴さん、佐藤愛子さんら錚々たる作家の方々からも原稿をいただきました。また司馬遼太郎の「街道をゆく」、池波正太郎の「真田太平記」、有吉佐和子の「悪女について」などの連載から生まれた名作を振り返る企画も掲載。担当した若い社員らは誇らし気でした。
長い歴史の中で、1931年の満州事変以降、日本が戦争に突入していく時代を週刊朝日がどう報じたか、知りたくて作家の保阪正康さん、桐野夏生さんと一緒に深掘りしました。従軍記者として週刊朝日などに寄稿した林芙美子を主人公にした桐野さんの小説「ナニカアル」に感化された企画でした。戦時下の表紙は皇族、軍人、愛新覚羅溥儀、藤田嗣治らによる戦争画などが飾り、近現代史そのもの。黄ばんでボロボロになった紙を捲ることは、雑誌編集者冥利に尽きる作業でした。
編集長を退いた後も、週刊朝日の生き残りを模索し、2021年4月からは週刊朝日とデジタルの一体運用に挑戦するため、ニュースサイト「AERA dot.」編集長に再登板しました。
じつは週刊朝日の副編集長時代の2017年4月、AERA dot.を創刊し、編集長も2年、兼務していました。
当時、週刊朝日とAERAの記事を要約し、Yahoo!などに配信する「dot.」というサイトはありましたが、立ち上げた先輩が早期退職し、開店休業のような状態。システムを居抜きで運用し、独自ネタをAERA dot.で先行配信し、週刊朝日が誌面に取り込むなどのスキームを実践しました。記事を量産し、翌年には月間PVが1億を突破。週刊朝日とAERA dot.は大幅な増収増益となりましたが、このスキームも人事異動やコロナ禍で瓦解していきました。
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source : 文藝春秋 2023年3月号