「がんにならない」「死なない」生き物から不老長寿の秘密を探る
前回見たように、最先端の研究によると、健康寿命は延ばせても、最大寿命には「120歳前後」という絶対的な限界があるという。老化と死はあらかじめ遺伝子にプログラムされており、老化した細胞にもがん細胞の増加抑制などのメリットがあることがわかってきた。また、「寿命の延長」と「生殖」は二律背反の関係にあり、アンチエイジングのためには生殖を諦めなければならない可能性もあることが見えてきた。
だが、地球上には長寿と生殖を両立させている生物も存在する。今回はそのような生物の研究の最前線から、ヒトの寿命を延ばせる可能性を探ってみたい。
グーグルが15億ドルの投資をした老化研究所・カリコでは、ハダカデバネズミが研究対象とされている。ハダカデバネズミはその名のとおり皮膚に毛がなく、前歯が出ている体長10〜13センチの小型のネズミである。アフリカ東部に生息し、サバンナの地中にトンネルを掘り、コロニーを作って生息している。目はほとんど見えず、鳴き声によって序列の区別をしている。
注目は、その寿命である。ハダカデバネズミの平均寿命は約30年で、3年が寿命とされるハツカネズミの10倍も長寿である。
もし寿命を10倍延ばせるなら、人間の最大寿命120歳の10倍の1200年生きることも可能になる――と考える人たちもいると聞く。そんなことが実現できる鍵が、このネズミに隠されているのだろうか。
代謝が低いほうが長生きする
熊本大学大学院生命科学研究部の三浦恭子教授の研究室では、約1200匹ものハダカデバネズミが飼育されている。デリケートな生き物で、強い香りが大きなストレスになってしまうということで、念のため化粧品も避けて研究室を訪れた。飼育室に入ると、ケージの中で5重にも6重にも折り重なって眠るハダカデバネズミの姿が目に飛び込んできた。
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source : 文藝春秋 2023年4月号