「シン・仮面ライダー」を解剖する

太田 啓之 朝日新聞記者
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庵野秀明監督は「日本人の自立」への課題を描いた

 庵野秀明監督の「シン・仮面ライダー」を、心を震わせながら観た。「『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』ほどのヒットは見込めないのでは」との指摘もあるが、そんなことは僕にとってはどうでもよい。庵野監督の「仮面ライダー」という作品への凄まじいまでの愛情とリスペクトとこだわり、他者への絶望と他者へのつながりを激しく求める思いとの間に引き裂かれた自らの内面をぶちまけつつも、それを一般の人々が楽しめるエンターティンメントへと昇華しようとする強靱な意志が画面からひしひしと伝わってきたからだ。

 3月31日にNHK BSプレミアムで放送された「ドキュメント シン・仮面ライダー~ヒーローアクション 挑戦の舞台裏~」でも庵野監督はアクション場面の生々しさ、切実さを徹底的に求め、「殺陣(たて)ではなく殺し合いを演じて」「段取りなんかいらない」とアクション担当のスタッフの仕事を全否定するかのような厳しいダメ出しをしていた。庵野監督に反発を感じる視聴者も少なくなかっただろうが、この「狂気」とも言える執着が、庵野監督の創造する作品を凡百の映像とは隔絶した水準にまで引き上げているのだ。

 しかし、庵野監督の「シン・シリーズ」が世間に対して強い訴求力を持つ理由はそれだけではない。庵野監督は2001年のインタビューでこんな発言をしている。

仮面ライダー大集結特展(2018年) ©時事通信社

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source : 文藝春秋 2023年5月号

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