母親お薦めの『竜馬がゆく』

加納 愛子 お笑いコンビ「Aマッソ」
エンタメ 読書

 父親がライターの仕事をしていたこともあって、本に囲まれて育ちました。本棚に収まりきらないサブカル系の雑誌なんかは、作業スペースの床に山積みという家です。

 私が18歳の時、母親が「20歳になる前に読め」と言って本棚から取り出したのが『竜馬がゆく』(文春文庫)でした。当時の私は大学が推薦で決まって受験らしい受験もしていないし、特に志もなかった。「何か事をなそうとする前に読んだほうがいい」みたいな感じで勧められました。もしかしたら母親自身が若い頃に読みたかったのかもしれない。司馬遼太郎に関しては、父親以上に母親の方が好きだったみたいです。

Aマッソ 加納愛子氏

 1巻で竜馬は19歳で江戸へ出ます。自分と同じ年頃の竜馬は、特段美化されているわけじゃない。歴史上の人物として考えていた存在が一気に身近に感じられるようになりました。全8巻を読み終えて、「自分も一旗揚げてやろう!」……とはならなかったですけど(笑)。

 でも、影響を受けたことが2つあります。1つは歴史が好きになったこと。司馬さんの他の作品や海音寺潮五郎などの歴史小説、さらに時代が下って自分の祖父母の時代も知りたくなって、半藤一利の『昭和史』も読みました。好きな本から興味を広げていくというのは、自分の読書スタイルになりました。

 もう1つは、物の見方です。司馬さんは竜馬の目を通して登場人物たちの魅力を描いています。そういう「人の面白がり方」を私も考えるようになりました。たとえば後輩芸人が自分のユーチューブチャンネルに出てくれる時。相手のわかりやすい長所を笑いに活かすだけじゃなくて、ここを切り取ったらもっと面白くなるな、と企画するのが楽しいんです。

 芸人になってからは、とにかくお金がない。古本が一番の娯楽でした。映画1本分の値段でたくさん読めますから。まだ自分の好みが掴めていなくて、有名作家や話題の本を手当り次第に乱読しました。

 好みが明確になったのは、26~27歳頃に翻訳家・エッセイストの岸本佐知子さんを知ってからです。日常の延長にあるファンタジーが好きなんだと自覚しました。自分のコントもそういう世界が多いです。

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source : 文藝春秋 2023年5月号

genre : エンタメ 読書