1995年から11年にわたって、週刊文春に連載されていた「お言葉ですが…」というコラムがありました。
「名前」の前は何の前? など、日本語をテーマにユーモラスな文章で縦横無尽。その一方、木鐸たるべき識者やマスコミの誤った言葉づかいには、容赦なく筆誅を加える。
そのコラムの筆者が高島俊男先生です。私は先生の母校姫路東高校の後輩で、同校に勤務していた2005年、講演をお願いしたことを機に、お付き合いが始まりました。
先生は2年前に84歳で逝去されましたが、この春、故郷、兵庫県相生市に顕彰碑が完成しました。碑文は、先生の畏友、影山輝國先生を中心に、親しい有志が練りに練り、先生の生き方を表す「人とはちがふ道を歩く」としました。
高島先生は姫路東高在学中には新聞部、生徒会長として活躍。進んだ東京大学では経済学を学び、一度は銀行に就職したものの文学への思い断ちがたく、27歳で東大文学部に学士入学して中国文学を専攻。大学院修了後、東大助手に採用され、37歳で岡山大学講師に着任。学者としては遅いスタートでしたが、『李白と杜甫』『水滸伝の世界』など、奥の深い、良質な入門書を書いています。また留学生を同居させ中国語の習得にも励まれました。
そのまま学者のレールに乗っていれば高く遇されたと思いますが、53歳で岡山大を助教授で退職。ご母堂の介護という名目でしたが、おそらく組織にしばられるのが性に合わなかったのだと思います。
介護が終わると、文筆家として再スタートし、『本が好き、悪口言うのはもっと好き』で講談社エッセイ賞を受賞。随筆家として認められました。週刊文春で連載をはじめると、専門の中国文学だけでなく、日本のことばや文学、歴史から、音楽、芸術など、これまでの読書の蓄積を存分に発揮。丸谷才一さんや阿川弘之さんなど名だたる方々が「高島さんには教えられる」と書いているほどです。
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source : 文藝春秋 2023年6月号