戦後70年に当たって、国々が歴史認識をめぐって戦ったいわゆる歴史戦がようやく一段落した形である。
日中に絞って見れば、安倍首相の内閣総理大臣談話(8月14日)、天皇陛下のお言葉(8月15日)、習近平国家主席の記念演説(9月3日)があった。
習近平演説は「中国人民は14年の長きにわたる、想像を絶する艱難辛苦に満ちた闘争を経て、抗日戦争の偉大な勝利を手にした」と述べるとともに、この戦争が「最も早い時期に始まり、最も長く続いた」ことを強調した。
第2次世界大戦を戦った連合国のうちどこよりも早く、また、どこよりも長くそれを戦い抜いたのは中国だったとし、従来、中国の役割があまり評価されてこなかったことへの修正を迫る姿勢を明確にした。
このくだりは、太平洋戦争さなかの1943年2月、蒋介石夫人の宋美齢が米議会で行った演説のトーンと似ている。彼女もまた、中国が誰よりも早く誰の助けもなしに日本の侵略と戦ったことを強調した。ただ、宋美齢演説では、抗日戦争の長さは「5年半」だったが、習近平演説では「14年」となっている。今回は恐らく天皇陛下が新年の感想で、「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学ぶ」ことの大切さを訴えたのを“活用”したものと見てよいだろう。
しかし、習近平演説は、1972年の国交正常化後の日中の和解への取り組みにはまったく触れなかった。
中国共産党は、高度成長が終焉し、腐敗まみれの中国を統治する上で、日本という仮想敵が依然、政治的に必要な存在と見なしているのだろうか。日本に融和的な姿勢を示すと“愛国国民”から強い反発を招くため、下手に動けないのだろうか。
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source : 文藝春秋 2015年11月号