「大新聞紙の論說までが、自由獨立の風が失くなつてゐるのは、困つたものである」
この連載が典拠の1つとしている『文藝春秋七十年史』の執筆者は『日本のいちばん長い日』の半藤一利氏である。よって、文藝春秋社という一私企業の歴史も昭和史と関係づけられている部分が少なくない。たとえば昭和6年の社内改革のあとにはこんな一節が続いている。
「実に、文藝春秋社が株式会社としての特記すべき転換をなしとげたとき、それと時を同じくして、昭和史もまた、大いなる転回点を迎えていたのである」
では、昭和6年から昭和12年の日中戦争勃発に至るまでどのような政治・社会的な出来事が起こっていたのだろうか? 半藤氏の記述に従いながらまとめてみよう。
まず昭和6年だが、この年は、前年の11月に東京駅で狙撃されて重傷を負った浜口雄幸首相の症状が悪化し、第二次若槻禮次郎内閣が4月に成立したことが特記される。
昭和4年7月に田中義一内閣総辞職を受けて内閣を発足させた民政党の浜口首相は昭和5年1月に井上準之助蔵相主導による金解禁を実施するが、これが運悪く前年10月に始まったウォール街発の大恐慌ともろにぶつかって、日本社会を未曾有の不景気にたたき込む結果になる。昭和4年に公開された小津安二郎監督の映画にちなむ流行語「大学は出たけれど」がすっかり定着し、社会には大学を出ても就職できない若い世代の怨嗟の声が渦巻いていた。
菊池寛は「文藝春秋」昭和6年1月号の雑記「社會不安」でこんなことを書いている。
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source : 文藝春秋 2023年10月号