グリーン経済安保を脱中国依存で進めよ

北村 滋 前国家安全保障局長
ニュース 経済 中国

「脱炭素」は中国依存のリスクを孕んでいる

 日本はかつて、再生可能エネルギー技術のトップランナーだった。太陽光パネルの開発で世界をリードし、2000年代半ばまでは、シャープや京セラ、三洋電機(現・パナソニック)といった日本勢が世界で5割のシェアを誇った時期もあった。ところが、シャープは2007年に生産量世界第1位の座から転落し、パナソニックは2021年に太陽電池の生産から撤退すると表明した。今や世界シェアの大半を中国企業に奪われ、日本勢は見る影もない。

北村滋氏

 再エネ拡大の切り札として期待される洋上風力発電でも、日本は出遅れている。政府は2040年までに30〜45ギガワットの洋上風力発電所を設置する目標を掲げ、洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会は同年にメンテナンスを含む国内調達比率を6割とするビジョンを策定している。ところが、主要メーカーであった三菱重工業や日立製作所、日本製鋼所は風力発電機の生産から相次いで撤退した。富山県入善町沖の洋上風力発電事業では、中国の風力発電機大手「明陽智慧能源集団」が参入を決め、今春に風力発電機を納入したという。

 日本政府は風車を海に浮かべる「浮体式」で巻き返しを図ろうと、洋上風力発電の低コスト化プロジェクトに1195億円を投じるなどしているが、課題は少なくない。浮体式の技術を活用するためには、洋上風力発電施設の設置場所を現在の領海内から排他的経済水域(EEZ)へと広げていく必要があるが、そのための法制度も未整備のままだ。

脱炭素と安保政策の相互変容

 電気自動車(EV:electric vehicle)や風力発電に欠かせない重要鉱物(critical mineral)についても、日本のサプライチェーンは脆弱だ。経済産業省の「重要鉱物に係る安定供給確保を図るための取組方針」によると、EVのバッテリーに欠かせないリチウムは、約55%を中国からの輸入に依存している。EVのモーターや風力発電タービンの生産に不可欠なレアアース(希土類)も、中国からの輸入が約60%を占めているという。

 こうした中、脱炭素政策は加速度的に進んでいる。

 菅義偉内閣総理大臣(当時)は2020年10月の所信表明演説で、「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言した。政府は2050年のネットゼロ(温室効果ガス排出量正味ゼロ)達成に向け、2030年度の温室効果ガス排出46%削減(2013年度比)、さらに50%削減の高みを目指すとの目標を掲げる。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から

  • 1カ月プラン

    新規登録は50%オフ

    初月は1,200

    600円 / 月(税込)

    ※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。

  • オススメ

    1年プラン

    新規登録は50%オフ

    900円 / 月

    450円 / 月(税込)

    初回特別価格5,400円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。

    特典付き
  • 雑誌セットプラン

    申込み月の発売号から
    12冊を宅配

    1,000円 / 月(税込)

    12,000円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります
    雑誌配送に関する注意事項

    特典付き 雑誌『文藝春秋』の書影

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2023年11月号

genre : ニュース 経済 中国