映画になった『フィリピンパブ嬢の社会学』

中島 弘象 文筆家
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 当時、大学院生だった私はフィリピンパブで働く若い女性を研究しようと、名古屋市内のフィリピンパブを回っていた。そこで偶然入った店で隣に座ったフィリピン人女性ミカと出会い交際した。

 契約期間3年、給料月6万円、休み月2回、売り上げノルマ・ペナルティー有、住む場所は管理され、外出禁止。ミカが背負っていた契約だ。

 2人の交際は常にブローカーに見つからないようにしなければならないのに加え、私の親、友人、先生、日本に長く住むフィリピン人までフィリピンパブ嬢との交際に大反対だった。

 周囲の大反対と様々なトラブルを乗り越え2015年に私たちは結婚。2017年にはフィリピンパブ嬢ミカとの交際から結婚までの実体験を書いた『フィリピンパブ嬢の社会学』を出版した。

 出版してから1年が経った2018年。映画監督、白羽弥仁氏から「この本を映画化したい」と連絡が来た。「今の日本映画には日本人と外国人が対等な目線で描かれている作品がほとんど無い。この本にはそれが描かれている」との熱い想いを受け、映画化に向けて白羽監督と共に歩むことになった。

『フィリピンパブ嬢の社会学』(新潮新書)

 自治体や企業などに企画書を持っていくが「面白そうだね」という反応は出るものの「映画の資金協力をするのは難しい」と断られることが続いた。

 何度も断られ、私がめげそうになっても白羽監督は「99断られても1オーケー貰ったらそこから始まる。いつかオセロの黒の行列が白にバタバタッとひっくり返るような時が来るから」と全く諦める様子もない。2020年初めにはコロナ禍になり、映画化に向けての身動きも取れなくなった時もあった。それでも白羽監督は動き続け、ついに私の地元、春日井市で映画製作実行委員会が作られ、映画資金を集めることが出来た。

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source : 文藝春秋 2023年12月号

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