過去の歴史から目を背け、「常に正しかった」と強弁『日本共産党の百年 1922〜2022』日本共産党中央委員会

ベストセラーで読む日本の近現代史 第123回

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官
エンタメ 政治 読書

 野党第一党の立憲民主党が選挙協力をめぐって動揺している。

〈立憲民主党が、次期衆院選での野党間の候補者調整をめぐり、ジレンマが深まっている。〔九月〕一四日に「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)の呼びかけで立憲、共産、れいわ新選組、社民の野党四党の幹事長・書記局長が意見交換を始めたが、共産に接近するほど、日本維新の会や国民民主党が離れていくためだ。/「与党の議席を一つでも減らすには野党が連携、協力することが極めて大事。『候補者調整を進めていきたい』と申し上げた」/約一時間の意見交換後、立憲の岡田克也幹事長は記者団にこう語った。ただ、どういう政党の枠組みを目指すのかなどの点には言及しなかった〉(「朝日新聞」9月15日付、朝刊)

 日本共産党は有言実行の党だ。日本の資本主義体制を打倒し、共産主義社会を目指す革命政党であることを隠していない。今年10月に刊行された日本共産党の公式党史『日本共産党の百年』を読むと、共産党が普通の政党でないことがわかる。

『日本共産党の百年 1922〜2022』日本共産党中央委員会

 前回公刊された公式党史は『日本共産党の八十年』(日本共産党中央委員会出版局、2003年)だから、20年ぶりに党が公式に歴史を総括したことになる。日本の政治を読み解く上でも共産党の動向は重要だ。興味深いのは、100年党史が日本共産党中央委員会出版局からではなく、共産党系の総合出版社・新日本出版社から刊行されていることだ。党内だけでなく、広く一般の読者にも届くようにするという共産党の「反転攻勢」なのだろう。

 共産党が強い被害者意識を持っていることは以下の記述から明白だ。

〈二〇二二年七月十五日、日本共産党は、創立百周年を迎えました。/創立以来の日本共産党の百年の歩みは、日本国民の利益を擁護し、平和と民主主義、国民生活の向上、自由と平等、社会進歩をめざして、その障害になるものにたいしては、どんなに強大な権力であろうと、勇気をもって正面から立ち向かってきた歴史でした。この百年、党にとって順風満帆な時期はひと時もなく、たえまのない攻撃にさらされ、それを打ち破りながら前途を開く――開拓と苦闘の百年でした。この歩みは、日本共産党が社会の根本からの変革をめざす革命政党であることの証しにほかなりません〉

 それにしても「この百年、党にとって順風満帆な時期はひと時もなく」というのは、かなり厳しい情勢認識だ。だから革命的警戒心を怠ってはならないということになる。いずれにせよ、ここで「日本共産党が社会の根本からの変革をめざす革命政党である」という自画像を再確認したことの意義は大きい。

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source : 文藝春秋 2023年12月号

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