総資産は約102兆円、市場運用資金残高は約57兆円――農業、林業、漁業などの協同組合を統べる中央金融機関として、ピラミッドの頂点に立つ農林中央金庫(奥和登理事長)がいま、リーマン・ショック以来の窮地に立たされている。
農林中金が2023年11月16日に発表した同年4~9月期の連結決算は、純利益が前年同期比15%減の1443億円で着地した。表面上は穏当な業績に見えるが、さにあらず。
「有価証券の評価損は9月末時点で2兆5356億円と、3月末の9462億円から2.7倍に拡大しています。米連邦準備理事会の金融引き締めによる米金利の上昇によって、外債を中心に、債券の評価損が膨らんだことが主因です」(金融アナリスト)
決算会見の席上で奥氏は、有価証券の評価損が拡大していることについてこう弁明した。
「世界的に長期金利が一段と高くなったことが要因だが、この水準でも自己資本比率は十分健全性を満たしている」
確かに農林中金は、格付け会社から「資本効率が悪い」と指摘されるほど、自己資本を過剰に積み上げている。一般的に、大手銀行でも10~15%程度の自己資本比率であれば十分とされるなか、農林中金は含み損が膨らんだ2023年3月期でも22.03%、同年9月期も18.13%と高水準を維持している。
「リーマン・ショックの二の舞になりかねない」
しかし、内実は危うい。例えば、2023年3月期の連結純利益は前期比で72%減の509億円と、惨憺たる状態にあった。原因はアメリカの金融市場だ。
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