管制官との交信を分析すると、航空史上最大の事故との共通点が……
あの日、1月2日夕刻の羽田空港・C滑走路上における日本航空516便(エアバスA350型機)と海上保安庁の双発プロペラ機(ボンバルディアDHC-8-300型機)の衝突事故の経緯を、管制交信記録を軸に整理して、問題点がどこにあったかを浮かび上がらせることにする。管制官の呼称は、「東京タワー」。
羽田空港の西端にあるモノレール整備場駅近くの海上保安庁羽田航空基地では、この日午後、元日早々に発生した能登半島地震の被災地に送る救援物資をボンバルディア機に積み込む作業が行われた。計画では、16時45分に羽田を発って新潟に向かう予定だったが、運ぶ救援物資が毛布100枚、簡易トイレ700回分、エマージェンシーブランケット200枚、非常食850食、飲料水2リットル入りボトル156本、等々、大量だったため、積み込みを終えた時には、17時を回っていた。
待機していた機長M氏をはじめ、副機長、整備士2人、通信士、レーダー士の計6人が乗り組んだ。海保航空基地から出発に使うC滑走路まではかなり距離がある。海保機は、羽田空港の地上管制官(グランド)の無線周波数にダイヤルを合わせ、移動の許可を得てC滑走路に向かった。機長M氏の頭の中には、出発が遅れたので、「急がなければ」という強い思いがめぐっていたであろう。
その頃、新千歳空港からの日本航空516便が木更津電波標識上空を通過して、C滑走路34R(ライト)を目指して進入降下を開始していた。やがて起こる海保機との衝突事故の4分半ほど前だ。
衝突までの4分半
17時43分02秒「東京タワーへ、こちらJAL516、(着陸後は)スポット18番です」(注・スポットは航空会社側が決める)
「JAL516へ、こちら東京タワー、グッドイブニング、滑走路34Rに進入を継続してください。風320度(ほぼ北西)7ノット(3.6メートル)、(滑走路34Rからは)出発機が出るところです」
43分12秒「こちらJAL516、34Rへの進入を継続します」
誤聴を防ぐための復唱だ。JAL516便は順調に進入降下を続けた。
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