同性婚に消極的な自民党で起こる「地殻変動」

旬選ジャーナル

古田 大輔 ジャーナリスト・メディアコラボ代表
ニュース 社会
新聞、雑誌、テレビ、ネット、ラジオ……“目利き”が選ぶ「今月の一押しニュース」をチェックしよう! 今回の目利きは、ジャーナリスト・メディアコラボ代表の古田大輔さんです。

【一押しNEWS】同性婚に消極的な自民党で起こる「地殻変動」/7月14日、朝日新聞朝刊(筆者=小林豪)

 印象的なシーンだった。7月に実施された参議院選挙の公示前日、日本記者クラブが主催した党首討論会での一幕。「選択的夫婦別姓に賛成か」という質問に、参加した7党首のうち、自民党の安倍晋三首相だけが手を挙げず、なぜか1人で笑みを浮かべた。

 さらに続いて「性的少数者(LGBT)の法的権利を認めるか」という質問に対しては、安倍首相と公明党の山口那津男代表の2人だけが挙手しなかった。すると安倍首相は表情を硬くして、こう質問者を批難した。「今の段階で答えられなくても、直ちにノーではない。印象操作はやめてもらいたい」。

 イエス/ノーの二分法で対比されることを拒否する発言だったが、自民党がこれらのテーマに関して、反対と言わずとも、少なくとも消極的なのは所属議員らのこれまでの言動からも明らかだ。

 ここで改めて、この2つの争点について説明しておこう。選択的夫婦別姓とは、結婚をする際に夫婦どちらかの姓に統一することを強制せず、同姓でも別姓でも、夫婦に選択してもらう制度。同性の結婚の法制化は、男性同士、女性同士など同じ性別同士で結婚することを法律で認めようという動きだ。

 女性の権利への理解が進む中で、結婚に伴う名字の統一が、実質的には女性側に姓を捨てさせることに繋がり、多くの不利益があることを問題視する声が世界で広がった。2019年現在、同姓を強制するのは世界で日本だけになっている。同性婚についても、LGBTへの理解が広がり、法制化していないのはG7では日本だけ。中南米やアジアでも広がる中で日本が足踏みをしているのは、これらがジェンダーやセクシュアリティに関するテーマであり、「伝統的な家族観を壊す」という意見が自民党の中にあるからだ。

 自民党や保守派が言う「伝統的な家族観」とは何か。改憲をめぐる発言や草案に現れている。行き過ぎた個人主義をただし、国家の最小単位としての家族像を保守派の考える「伝統的な価値観」で再構築するものだ。世界で進む夫婦別姓や同性婚などの「多様な家族像」とは逆行していると言える。

 冒頭で紹介した記事は、そういった現状の中で、自民党の中でも静かな地殻変動が起きていることを示す。「朝日・東大共同調査」は個別政策に関して各候補者にアンケートし、各党と候補者の考えがわかる最大級のデータベース。そのデータを過去分から精査すると、自民党は今でも最も同性婚に消極的な党だが、2016年→17年→19年の3回の国政選挙の間に「反対」「どちらかと言えば反対」を選ぶ候補者が60%→46%→36%と減り、中立が増えているというのだ。「賛成」「どちらかと言えば賛成」は6%→9%→9%なので微増に止まるが、反対派の急減は党内の変化を表している。

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source : 文藝春秋 2019年9月号

genre : ニュース 社会