日本と私の30年

バヤルサイハン・バンズラグチ 駐日モンゴル国特命全権大使
ライフ 国際 テレビ・ラジオ

 ドラマ『VIVANT』(TBS系)に代表されるように、いま、モンゴルと日本は親密です。このドラマはモンゴルの、製作費の一部を還付する映画芸術支援法の適用を受けて撮影が行われました。一方、モンゴル国内では、観光産業など約240億円の経済効果を生み出したと言われています。まさにWIN-WINの関係でした。

 ドラマでは、架空のバルカ共和国が出てきますが、実際の地図上では、同国はモンゴルの一部。日本でたとえれば、九州が他国の領土になっているようなものです。他の国の作品でしたら怒るかもしれませんが、日本の作品だからモンゴル人も「面白い」と受け入れています。

 個人的には、主演の堺雅人さんのモンゴル語がお上手で驚きました。日本人とモンゴル人は顔が似ているので、一瞬見ただけでは、どちらの国の俳優か分かりにくい。でも発音で「この方は日本の俳優だ」と聞き分けられるのですが、堺さんはモンゴル人に非常に近い発音でしたね。

バヤルサイハン大使 ©文藝春秋

 私が特命全権大使に着任したのは、ちょうどドラマがクライマックスを迎えた、昨年9月のことです。ただ、私と日本国は、もう30年もの長い付き合いになります。

 1991年に当時の海部俊樹総理が、西側諸国の政府首脳として初めてモンゴル国を訪問。民主化支援の一環として、留学生を積極的に受け入れ始めます。私もモンゴル科学技術大学2年生の時、94年から日本国政府の奨学金で3年間留学させて貰い、情報処理の勉強をしました。

 カルチャーショックはかなり受けました。父は建設省の官僚でウランバートル在住でしたが、祖父母は遊牧民。幼い頃は私も300キロ離れたボルガン県で祖父母とゲルで暮らしていました。学校に入ってからも休みには馬や牛と遊牧生活をしました。そこからバブルを経験した日本に来たので、活気溢れる街並み、最先端の若者文化……ギャップはかなり感じました。

 ただ、言葉に関しては、苦労しませんでした。社会主義のソ連式の厳しい学校で育ってきたので、日本語学校で、日本語だけを学べばいいという環境は非常に楽でした。テレビも日本語を覚えるのに役立ちました。お笑いも好きで、ダウンタウンの番組を楽しんで見ていました。食事もすぐに慣れました。生魚は当初抵抗がありましたが、今は寿司も大好きです。

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source : 文藝春秋 2024年6月号

genre : ライフ 国際 テレビ・ラジオ