偉大な業績を残し、世を去った5名の人生を振り返る追悼コラム
★唐十郎
劇作家で小説家の唐十郎(からじゅうろう、本名・大靏〔おおつる〕義英)は、劇団・状況劇場を率いて新作ごとに観客を驚かせた。
1967(昭和42)年、新宿の花園神社に紅テントをたてて『腰巻お仙』シリーズを上演し、観客が殺到して話題となる。「役者たちが、作者で演出のぼくも考えていないような演技をして観客を巻き込んでいったんです」。
40年、東京の下谷万年町にある長屋で生まれる。父は教育映画の監督、母も戯曲を書いていた。長屋にはヤクザや男娼なども多く住み、年中もめごとが起こり、「僕はそんな光景を、長屋の隅からぼんやりと見ていた」。
少年のころは内向的だったが、小学3年生のときに担任の女性教師と2人で学芸会の劇をつくり、拍手される快感を味わう。後に明治大学文学部演劇科に入学したのは、「あの時の高揚感を思い出したから」だという。
しかし当時の大学での講義はリアリズム演劇が中心で肌に合わなかった。卒業後、青年芸術劇場の研究生になるが7カ月でやめ、仲間と劇団「シチュエーションの会」を結成、サルトルの『恭しき娼婦』などを上演したのち劇団「状況劇場」に改名した。
この頃スカウトしたのが李礼仙(後に李麗仙)で、一緒に金粉ショーで地方を回り貯金した。67年、紅テントを買い花園神社で李が主役の『腰巻お仙』シリーズを上演し始める。麿赤兒などの大胆な演技もあり客がテントに殺到した。この年、李と結婚。
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source : 文藝春秋 2024年7月号