《新資料発掘》戦艦大和「水上特攻」79年目の真実 連合艦隊参謀・三上作夫が残した“肉声”

太田 啓之 朝日新聞記者

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「海軍にもう艦はないのか」とのご下問

 太平洋戦争で日本の敗北がすでに決定的となっていた1945年4月。連合艦隊参謀・三上作夫は、海軍航空部隊の前線基地がある鹿児島県・鹿屋にいた。

 三上は当時37歳。的確な戦況分析と沈着冷静な性格を買われて44年9月、連合艦隊参謀に抜擢されたエリートだった。三上は参謀として水上部隊の作戦立案を担当しており、連合艦隊に残された事実上唯一の主力艦である戦艦大和の運用に腐心する立場にあった。

 米軍は4月1日に沖縄に上陸するや戦略上の重要拠点である北・中両飛行場を占領した。敵が両飛行場を本格的に使い始めれば沖縄の制空権は奪われ、勝敗の帰趨は決してしまう。しかし、前年10月のフィリピン・レイテ沖海戦で惨敗した連合艦隊はほぼ壊滅しており、残された有効な攻撃手段は航空特攻しかなかった。三上は2日から、上司の草鹿龍之介参謀長と共に、横浜市・日吉の地下壕にあった連合艦隊司令部から鹿屋へと出張。3日、現地航空部隊との打ち合わせの結果、訓練中のパイロットを含む航空兵力の総力を挙げて沖縄方面の米軍艦艇に特攻を行う「菊水一号作戦」を決定したところだった。

 4日、連合艦隊司令部と鹿屋基地をつなぐ直通電話が突然鳴った。連絡役を務めていた三上が電話を取ると、レイテ沖海戦の作戦を立案した神重徳参謀の緊迫した声が響いた。

「本日、軍令部の及川古志郎総長が菊水一号作戦について奏上した際、陛下から『航空兵力だけの総攻撃か』『海軍にもう艦(ふね)はないのか』とのご下問(質問)があった。及川総長は恐懼して御前を引き下がり、現在作戦について協議中だが、大和部隊の沖縄突入作戦が計画されることになるだろう」

 水上艦艇の作戦担当参謀である自分がまったくあずかり知らぬ所で突然浮上した「寝耳に水」の大和特攻作戦に、三上は呆然とした——。

戦死者約4000人、戦果はほぼ皆無

 上記の記述は、2年近くにわたる取材の末に発掘した三上の録音証言などを元に、戦艦大和の特攻作戦が決まった当時の状況を再現したものだ。

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