優れた教授陣の存在自体が、慶應の“知的財産”だ
――慶應には金融やコンサルティング会社を目指す学生が多く、就職面での“早慶戦”では早稲田を上回っているとする調査もあります。上場企業の社長数でも出身大学別に見ると慶應がトップ。昨年度には大学発ベンチャー数で、慶應は東大に次ぐ第2位となっています。
伊藤 慶應発スタートアップの中核にあるのは、塾内で行われた「研究の成果」です。「学問上の研究」とその「実用化」が相乗効果を発揮するようになりました。最近では、医学部卒業生が創設した株式会社CureAppが「NEXTユニコーン」と呼ばれる高い評価を受けています。福永興壱教授ら医学部内科学教室(呼吸器内科)による臨床試験を経て日本で初めて医療機器として承認された禁煙治療アプリを世に送り出しました。喜ばしいですね。
慶應は10年ほど前から、「学問の社会問題解決への応用」を掲げ、スタートアップ支援に注力し、2015年に大学発のベンチャーキャピタルを立ち上げ、その3年後には「イノベーション推進本部」を設立しました。その甲斐もあって、昨年度にはベンチャー数で全国2位、集めた総投資額では、3年前より全国の大学で首位になりました。研究成果の活用としての特許収入も、3年前の5000万円から現在は1.5億円と3倍に伸びました。塾外の組織からいただく外部研究資金も、10年間で1.5倍の300億円に増えています。「物事の真理を探究し、得られた知見を応用して社会問題の解決を図ること」が慶應の基本姿勢で、スタートアップ支援や外部資金の活用は、今後も積極的に行っていくつもりです。
「義塾」=「パブリックスクール」
――高収入の士業である公認会計士試験や司法試験でも多くの合格者を出しています。これも慶應の「実学重視」の現われなのでしょうか。
伊藤 慶應義塾には創立者福澤諭吉が唱えた「実学」重視の校風があります。学問によって知識を習得することも大切ですが、それ以上に課題を解決していかに社会に貢献していくかに重きを置いている。福澤は「慶應義塾の目的」と呼ばれる文章にこう記しました。
〈慶應義塾は単に一所の学塾として自から甘んずるを得ず。其目的は我日本国中に於ける気品の泉源、智徳の模範たらんことを期し、之を実際にしては居家、処世、立国の本旨を明にして、之を口に言ふのみにあらず、躬行(きゅうこう)実践、以て全社会の先導者たらんことを欲するものなり〉
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