トップ・インタビュー 早大総長「受験に最適化した教育が 競争力低下を招いてきた」

総力取材“私学の雄”を徹底比較!

田中 愛治 早稲田大学総長

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日本で無名でも国際的評価の高い教員を採用

 ――2018年11月に第17代総長に就任してから6年。田中総長の改革の成果が表れ始めているようです。外国人留学生は5500人と慶應の約2.5倍、留学者数は交換留学だけでも600人超の約2倍と国際化は数の面で圧倒しています。加えて、受験生の志望順位にも地殻変動がありました。東進ハイスクールの「ダブル合格者進学先分析」では2021年以降、看板学部である早稲田政治経済学部と慶應法・経済学部において進学率が逆転。いまや、政治分野では両校に合格した学生の7割が早稲田を選んでいます。

 田中 ありがたいことで、地道な改革が実を結んできたと自負しています。総長就任時に「世界で輝くWASEDA」という目標を掲げましたが、改革の軸に据えたのが「国際化」と「文理融合」でした。

 政経学部の人気が高まった理由がまさにこの二点です。国際化でいえば、過去7年間、日本語でしか授業や研究発表ができない教員は1人も雇っていませんし、海外の大学で博士号を取得した教員が約半数を占めています。

早稲田大学田中愛治総長 Ⓒ文藝春秋

 文理融合については20年かけて進めてきました。2004年に新設の国際政治経済学科で「経済数学入門」「統計学入門」「ゲーム理論入門」を必修にし、続いて経済学科、2017年には政治学科でも統計学入門を必修化。さらに、2021年度入試から大学入学共通テストの数学Ⅰ・Aを必須にしました。

 入試のハードルが高くなった分、志願者は3割も減りましたが、これも想定内。慶應の経済学科では昔から数学が必須ですが、いまや経済だけでなく、政治を学ぶ上でも数学の素養は不可欠です。「政治経済学の最先端を学ぶなら早稲田で」という学生が集まってくれたことで学生の質も格段に向上しました。

 同時に、全学的な文理横断教育の取り組みとして、2014年にグローバルエデュケーションセンター(GEC)を設置し、文系の学生にも数学やAIを使ったビッグデータの解析を、理系の学生にも論理的文章の作成スキルを教えています。そもそも、この「文系」「理系」の区別は欧米にはありません。私はかねてより、受験に最適化し過度に効率を重視する教育のあり方が、日本の大学や日本企業の競争力の低下を招いてきたと分析しています。

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source : 文藝春秋 2024年10月号

genre : ライフ 教育