経済オンチくらいがちょうどいい

陣内 了 一橋大学経済研究所教授

NEW

ニュース 社会 政治

利上げが必要なのは明らかだ

 10月1日に発足したばかりの石破茂新政権ですが、メディアからは「出だしから市場の厳しい洗礼を受けた」と厳しい目が向けられているようです。

 まず自民党総裁選での石破氏の勝利直後、株価が急落し、巷では「石破ショック」と評されました。

 首相就任直後には、植田和男日銀総裁との初会談を受けた「現在、追加の利上げをするような環境にあるとは思っていない」との発言が批判されました。総裁選の決選投票を争った高市早苗氏が利上げに否定的なのに対し、石破氏は利上げ容認派と見られていたからで、「発言のブレ」が問題視されたのです。さらにこの発言は「中央銀行の独立性」の原則を損なうとも非難されました。

 こうした一連の出来事を受けて、石破氏はメディアでは「経済オンチ」とも評されているようです。

 私自身は石破氏が経済にどの程度精通しているのかは分かりません。少なくとも政治家として経済政策を積極的に発信してきたイメージはありません。しかし今の日本の首相には、敢えて言えば「経済オンチ」くらいがちょうどいい。というのも「経済」に対して「政治」にできることはそもそも限られているからです。現在の日本経済が抱える「アベノミクスの負の遺産」を前にすると、なおさらそう感じます。

陣内了氏

「経済がわかる」と自負する政治家ほど本来、市場に任せるべきところに介入しがちです。その結果、市場(価格)の自動調整機能が失われることがあります。とくにアベノミクス以降、“魔法の杖”ででもあるかのように金融政策に皆が過大な期待を寄せるようになってしまいました。しかも株価の上昇などはあったので財政規律の軽視も正当化されるようになった。これは政治家には好都合です。このこと自体がアベノミクスの最大の負の遺産なのかもしれません。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2024年12月号

genre : ニュース 社会 政治