ゴッホの喜びと希望

第150回

中野 京子 作家・ドイツ文学者

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エンタメ アート

一枚の名画をのぞき込んでみると……

 

✓見えてきたのは「巴旦杏」

この木はバラ科サクラ属の落葉樹で、日本語では古くはハタンキョウ(巴旦杏)、現在はアーモンドと呼ばれている。春先の葉のない枝に、白や薄桃色の愛らしい花をいっせいに咲かせるのは、さすがサクラの仲間。また果実の種子から取るアーモンドも貴重で、中近東では古代から栽培されてきた。スイートアーモンドは食用、ビターアーモンドは薬用やオイルの原料と、人間のために大いに役立ってくれている。

 


 

ゴッホの喜びと希望

『花咲くアーモンドの枝』

1890年、油彩、73.3×92.4cm、ファン・ゴッホ美術館 / 写真提供 alamy/amanaimages

 ほがらかな青い空に向かって、アーモンドの木が花を咲かせている。

 この平面的な描写から、一見、日本画と見間違えそうになるが、実はこれ、まだ見ぬ日本に憧れ続け、入手した浮世絵を一生懸命油絵に引き写していたフィンセント・ファン・ゴッホの作品だ。

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source : 文藝春秋 2025年2月号

genre : エンタメ アート