地方自治ジャーナリストの葉上太郎さんが全国津々浦々を旅し、地元で力強く生きる人たちの姿をルポします。地方は決して消滅しない――
柑橘の多品種化で若者が戻る
イラストレーション:溝川なつみ
今年も大きな災害が相次ぎ、昨年7月に発生した西日本豪雨の記憶は薄れがちだ。だが、同豪雨の被災地には、復旧さえままならない地区が今もまだ多く残されている。
「愛媛ミカン」発祥の地とされる愛媛県宇和島市の吉田町もそうだ。
吉田はリアス式海岸の町である。穏やかな宇和海に、険しい山が迫る。太陽が降り注ぎ、水はけのいい急斜面で栽培されるミカンは特に味がいいとされ、どの山肌にも一面のミカン畑が広がっている。
この急峻な地形が被害を拡大させ、土砂崩れで11人が死亡した。
JAえひめ南の清家(せいけ)継雄・伊予吉田営農センター長(50)は「約1400ヘクタールのミカン畑のうち、200ヘクタール程度が土砂崩れに見舞われました。土木業者は道路の復旧工事などに追われて、畑の修復に手がついていません。これ以上深く削られたり、土砂が流れ込んだりしないよう、畑には約8万袋の土嚢(どのう)を積みました。今年度中にさらに5万袋を積む予定ですが、助けてくれるボランティアが減ってしまって……」と目を伏せる。
ミカン畑に土砂が入ると、木の根が窒息し、葉が黄色になって枯れてしまう。「黄化」現象は現在も進行しており、ミカン畑の被害は崩落面積の2倍に増えた。
ただ、吉田町には暗さがない。
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source : 文藝春秋 2019年11月号