本当の「環状」道路は一号線だけ
環状道路と呼ばれるのが通称、「環七」とか「環八」と呼ばれる東京をぐるっと囲む道路だ。正式には「東京都市計画道路幹線街路環状〇号線」という恐ろしく長い名称の道路をいう。環八というからには環一から環八まで都内には環状道路が8本あることになるが、それぞれの環状道路の正確な起点や終点、通る場所や距離などがわかる人は東京人の中でも相当な道路通といってよいだろう。
環状道路といいながら、東京を完全に「環」でくくれている道路は、千代田区日比谷を起点に有楽町までを環状で囲む環状一号線だけだ。また、環状一号線はそのほとんどが内堀通りと日比谷通りから構成されるために、東京人でもこれらの通りを環状一号線として理解している人はほとんどいないのではないだろうか。
環状二号線は、2014年3月に虎ノ門、新橋間の通称マッカーサー道路と呼ばれる区間約1.4キロ開通して話題になった。マッカーサーがこの道路を計画したというのは都市伝説とされるが、汐留から築地市場を経て豊洲の新市場につながるこの道路は、新市場の汚染水問題から計画は大幅に遅れ、最終的な完成は2022年度にずれ込むことになった。この道路が完成してもなぜか終点は神田の佐久間町一丁目までで、実は環状にはなっていない。
五号線に至っては「五ノ一」「五ノ二」
環状三号線や四号線、五号線に至っては通常この名称がほとんど使われていない。というのも環状線が外苑東通りや明治通り、言問通りなどの通称名がついた「通り名」に途中から化けてしまっているため東京人の間でも「環状」になっているという意識が低いせいだと思われる。五号線に至ってはどういった経緯からか「五ノ一」「五ノ二」の2本の道路に分かれて分類されており、環状線の意識はほとんどない。
環状六号線は通称である山手通りのほうが一般的だが、両方の名前が併用されている。ただしこの六号線を地図上で眺めると環状であるどころか品川区の東品川二丁目から板橋区の氷川町まで都内をほぼ南北に貫くだけで、とても環状とはいえない代物だ。
環状七号線八号線になると東京の郊外部を走ることになるせいか、通りの名称がなくなり「環七」「環八」といった名称で呼ばれるようになる。この2本の道路になるとようやく環状として東京人の間でも意識されるようになる。ところが、もう一つ不思議なことがある。道路距離は環七で大田区の東海一丁目から江戸川区臨海町四丁目までの52.5キロに及んでいるのに対して環八では大田区羽田空港三丁目から北区岩渕町までの44.2キロまでにとどまっているのだ。普通であれば一号から八号まで環が大きくなっていくはずの道路距離が実は環七のほうが長いという不可思議な現象が起こっている。