『老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路』(野澤千絵 著)

 今日も都市部では高層マンションの建設ラッシュが続いている。景観の破壊もろくに気にせず。この国に住宅はまだまだ不足しているといわんばかりだ。一方で、老朽化の進んだ郊外のニュータウンは廃墟同然の状態で放置され、地方でも空き家が社会問題化している。住宅は余っているのだ。資産のつもりで購入した不動産が、思わぬ価格崩壊を起こした話も珍しくない。

 そんな、これまで「点」で語られてきた諸問題を、「住宅過剰社会」というキーワードで一気に「線」として繋げる新書が、着々と部数を伸ばしている。すべての問題は都市計画の杜撰さに起因している――データと実例に基づく冷静な筆致で、著者は〈不都合な真実〉を暴き立てる。

「誰もが薄々感じていた違和感を、すっきり解消してくれる本がやっと登場した。それがヒットの理由だと分析しています。就職して、家庭を持ったら、家を買う。買った家は最終的に、老後の資産にもなる。そんな『マイホーム信仰』みたいなものは、住宅の需要と供給のバランスが崩れたことで、すでに幻想となっているんです。マイホームは今後、資産どころか、買い手がつかず処分に困る負動産になることは間違いないんですよ」(担当編集者)

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 硬派で、お手軽には読み通せないうえに、そこらのホラー小説より恐ろしい内容だ。しかし、この〈不都合な真実〉に、多くの人が目を向けるべきだろう。

2016年11月発売。初版1万部。現在7刷5万5000部