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「いえ、私は趣味『赤木俊夫』ですから」

 音楽や映画、落語、建築、書道と趣味の幅広い俊夫さんに付き合い、コンサートや展覧会、寄席などに通った雅子さん。「雅子さんもそういう趣味があったんですか?」と尋ねると「いえ、私は趣味『赤木俊夫』ですから」と即答が返ってきました。大好きな夫の好きなことに付き合う、それが雅子さんの趣味でした。ずっと幸せに20年余り暮らしてきたのに、あの改ざんですべてが奪われてしまいました。

 なぜそんな改ざんをしなければならなかったのか? 財務省が公表した内部調査の報告書はその疑問に答えていません。だから雅子さんは「公平な第三者による再調査」を求めています。

俊夫さんは命を絶つ前、苦しい胸の内を雅子さんに書き遺した

 3月18日、提訴と手記公表の当日。弁護団が大阪地裁で記者会見し、雅子さんのコメントを読み上げると、テレビが速報し、国会でも取り上げられました。ところが麻生財務大臣は、雅子さんが望む改ざんの再調査をしないと発言しました。

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麻生大臣は夫の上司やったのに

――麻生大臣が「新事実はないから再調査はしない」と話したそうです。

雅子さん 悲しすぎます。麻生大臣は夫の上司やったのにこんな扱いされるんですね。もう一度調査してほしいです。

――麻生大臣は俊夫さんが亡くなった原因は「役所内の風土と結論付けている」とも述べたそうです。

雅子さん 組織の風土が原因なら麻生さんの責任だと思います。今でも本当のことを話せない状態です。このままだとまた死人が出ると思います。悪しき風土を作っているのは麻生大臣です。

麻生は「再調査しない」 ©共同通信

――安倍首相も再調査を拒否しました。

 すると雅子さん「えー。そうなんですか」と返した後……

雅子さん 安倍首相は2017年2月17日の国会の発言で改ざんが始まる原因をつくりました。麻生大臣は墓参に来てほしいと伝えたのに国会で私の言葉をねじ曲げました。この2人は調査される側で、再調査しないと発言する立場にないと思います。

 このあたりの切り返しの鋭さが雅子さんならではです。記事への反響の大きさが雅子さんを勇気づけました。

 手記を公表すべきかどうか、雅子さんは夫が亡くなってから2年間、迷いに迷いました。それだけ夫の職場だった近畿財務局側の呪縛が強かったと、側にいた私は感じていました。