成功するために最も必要な能力とは…
いまも強烈に覚えていることがあります。神宮球場での巨人戦、相手投手は桑田真澄さん。0-1で9回無死満塁の場面。2番打者の僕に、「初球から打て」と野村監督は指示を出しました。
動揺した僕はその瞬間、金縛りにあってバットが振れませんでした。セオリーでは、この場面は1球見送ることが多いからです。
代打で同じ場面がもう一度めぐって来た。カウント3ボール-0ストライクで、ベンチのサインは「打て」。「桑田はコントロールがいい。無死満塁で3-0、打者・城ならコントロールを乱さず真っすぐを投げるだろう。3-0から打った方が確率が高い」と、野村さんはそう読んだ。試合状況、カウント、打者の性質、投手の能力などを考慮して判断した。でも、僕は見逃し三振…。ベンチに戻って叱られました。
「なんで打たんのや、おまえ。責任を取るのはベンチや。監督が『打て』と言ったら、打て。消極的で使えん」
試合後、クラブハウスに戻ったら、松井(優典一軍総合コーチ)さんから「明日からファーム(二軍)な」と一言、告げられました。即二軍。
結果的にそこから真中(満)が起用されるようになった。積極的になれなかったことで、二軍落ちという仕打ちがあった。野球観が変わった瞬間でした。
「野球とは何か? 何が最も大切な能力か?」と問われたら、「勇気」だと思う。バッティングで大事なのは、何よりも勇気です。
プロ野球でもビジネスでも、成功する人はどんな人か?「逆境において楽天的に考えられる人のことだ」と、野村さんはおっしゃった。その言葉通りです。
僕らプロは、ある意味で毎日、逆境にいる。決定的な場面で、「オレが何とかしなきゃ」と思い詰めるタイプは打てない。体が硬くなるから。
根拠を確認することで組織は強くなる
監督は根拠を尋ねる人でした。試合中、ベンチで古田(敦也)さんを立たせて「あの配球は根拠がない」と叱る姿を見てきました。
結果を出せる人には根拠がある。だから僕も、会社で部下が行動した後はヒアリングをしています。「なぜこの会社へ営業をしに行ったのか」「どうしてこの人にアポイントを取ったのか」など、根拠を尋ねるようにしています。