組織を束ねるリーダーに問われる指針
野村さんの凄さは、「こうしたら勝てる」と戦術や戦略を徹底したことです。決してブレなかった。
なぜ、野村さんはブレなかったのか。たくさん勉強をしたから。豊富な経験値があったから。そして、理由はもうひとつある。
川崎憲次郎さんと先日話していて、「ノムさんは、あの年齢なのに考え方が柔軟なんだよな」と意見が一致しました。人は信じていたものが違った場合、考えを変えることを怖がったり、プライドが邪魔したりする。でも、あの人は何歳になっても、柔軟に受け入れる姿勢を持っていた。
ミーティングでも「オレはこうしてきた。だからおまえもやれ」とは言わなかった。「オレはこうしてきた。なぜなのか。なぜこのカウントでこうするのか」と根拠を説明した。僕が投げて打たれたとき、「なんであの場面で(あの球種を)投げたんや」と尋ねられて、答えられなかったら二軍に落とされた。こういう見立てでこの選択をしたと説明したら、「まあ、それもあるわな」と叱らなかった。
野村が目指した野球
「プロのレベルにいる選手どうしは、技量に大した違いがない。そのときに実力差がつくのは、作戦や根拠を持ってやるかどうかだ」と口を酸っぱくしておっしゃった。
データスタジアムの菅原均社長は、「会社を“チーム”にしないとダメだよね」と話しました。僕もそう思うんです。
一人のスーパーマンに頼るのではなく、組織プレーでやっていくためには、社員みんなが同じ目的を持って働くことが求められる。そのために、マネジメント側は、社員に目的を明確にしなければならない、と。
野村監督は、僕ら選手に明確に示してくれた。いま、高津(臣吾)監督や石井(一久)監督の采配を見ていると、そこに野村さんを感じる。「自分がいなくなっても、選手が主体的に動ける野球」を、野村さんは目指した。だから僕も、この先、社長や僕がいなくなっても、ブレずに進める会社を目指したいです。