強制労働、強制不妊…疑惑の数々
このほかにも、労働者が強制的に労働させられているという強制労働の疑惑、女性が産児制限を強制されているという強制不妊の疑惑がある。中国政府に言わせれば、前者は「反テロ」と「脱貧困」の観点から、失業率を減らし、住民の平均収入を上げるために、就業促進の一環として動員が強化されたことによる。
後者は、貧困家庭の多産が将来の「テロリスト」を生み出しているという一方的な偏見に基づいて、不妊手術を奨励したことによる。いずれにせよ、動員であれ手術であれ、それを拒否すれば、政府の政策に協力的でないとして、「テロリスト」の烙印を押されかねない。住民から見れば有無を言わさぬ強制に他ならなかった。
中国政府は、これらの政策を肯定的に捉えている。しかしそうした中国の論理は、ここに来て国際社会の批判をこれまで以上に強く受けている。中国は国際社会の圧力に屈して政策を変えたと受け止められることはしないだろうが、2021年に陳全国から馬興瑞に書記が変わって以降、徐々に監視を弱め、政策をソフトな方向に調整しつつある。
とはいえ、新書記馬興瑞も繰り返し言っているように、「反テロ」そのものをやめることはないだろう。「テロ」を根絶したことは、第2期習近平政権の数少ない成果のひとつである。第20回党大会以降も、「反テロ」を完全にやめることはできないだろう。そうであるとすれば、収容されたまま未だに消息がわからない人々が、生きて公の場に戻ってくる日は、まだ先のことになるかもしれない。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2023年の論点100』に掲載されています。