トイレの男女の別は、トランスジェンダーにどう適用されるか。戸籍上は男性だが女性として生きるトランスジェンダーの経済産業省職員が女子トイレの利用を不当に制限されたとして国に改善を求めた訴訟で最高裁が11日、利用制限を認めた人事院の判定を違法とする判決を言い渡した。
「職員は男性として入省後、性同一性障害の診断を受けてホルモン治療を始めました。健康上の理由で性別適合手術は受けていませんが、2010年には勤務先でも女性の格好に。ただ、省側は他の女性への配慮を理由に女子トイレは執務室から2階以上離れた階を使うよう求めており、その適法性が争われました」(司法担当記者)
最高裁が軍配を上げたのは職員の方だった。職員が2階以上離れた女子トイレを使い始めた後も特段のトラブルは生じておらず、強く配慮を求める声もなかった一方で本人は不利益を被っており、省側が裁量を逸脱したと認定した。
「最高裁は、近くの女子トイレを使わないようにするのは緊急措置として許されるだけで、トラブルもないと分かった時点で認めるべきだったとしました。性的マイノリティーの職場環境について司法の番人が判断を示したのは初めてです」(同前)
東京・歌舞伎町のジェンダーレストイレ出現など、性的少数者のトイレ問題への世論は沸騰しつつあるが、最高裁は裁判官5人全員が補足意見を付ける異例の展開で釘を刺すことも忘れなかった。