「良かったら付き合わない?」
そうしたら「こちらこそ、よろしくお願いします!」とOKをもらいました。
OKをもらったときは、とてつもなく喜びました!
それこそ、雄たけびをあげてジャンプ! マンガみたいなヤツです。
「彼女ができて、すべてが救われた」
初めての彼女ができたというのも嬉しかったですが、それ以上に、自分を理解し、受け入れてくれる人がいたというのが堪らなかったんです。こんな自分でも存在していいんだ、初めてそう思えて、すべてが救われた気がしました。
交際するようになってから、彼女の前だけでは本当の自分を出せました。それまでは公の場では、自分のことを「私」と呼んでいましたが、彼女と2人だけのときは「オレ」を使うようになりました。
ただ、本当の内面は出すことができても、身体は女性のままです。
まあ、髪型や服装はかなりボーイッシュにしてはいましたが、見る人が見れば女性であることは丸わかりなわけです。自分といたら彼女が世間的に変な目で見られてしまうんじゃないか、という不安はいつもありました。だから、彼女といるときは必要以上に胸を押しつぶして服を着たり、男性っぽい仕草をすることを心掛けていました。
彼女と付き合っていることは、周囲の選手にはもちろん、家族や知人を含めて誰にも秘密にしていました。
デートといっても食事をする程度だったし、人目があるときは仲の良い友だち同士のように振る舞っていました。当時はまだ新人で無名に等しい存在でしたが、プロレスラーはお客さんの前に立つ仕事。「万が一、誰かに見られて変な噂を流されたらマズイ」と思い、極力目立たないようにして、デートといってもせいぜいお互いの家を行き来するくらいで過ごしていました。
普通のカップルに比べたら、なにかと不自由でぎこちない関係だったかもしれませんが、それでも気持ちが繋がっているということだけで幸せでした。