初めてできた彼女との交際は、誰にも知らせず、ひっそり続けていくつもりでした。しかし、意外なところから家族にバレてしまいます。きっかけは、姉とのメールでした。
自分は姉と仲良しで、実家を離れた後も頻繁にメールで近況を報告し合っていました。ちょうど彼女と親しくなり始めた頃だったと思います。つい嬉しくて、姉に「最近、仲の良い女の子がいるんだよね」なんて感じで送ってしまったんです。姉は勘が鋭いところがあるので、それを見て「ピン!」ときたらしいんですね。それで「由加莉からこんなメールがきた!」と母に見せてしまったんです。
それからは、ちょっとだけ大変でした。
「どういうことなの?」家族にカミングアウトした日
「いったいどういうことなの?」
驚いた母から電話がかかってきました。
自分はまだ隠しておきたかったから、しどろもどろになってしまい、うまく話せない始末。結局、言いたいことも言えず、もやもやしたものが残ったまま電話を切ってしまいました。
実は、この電話の直後、自分は久しぶりに里帰りする予定を立てていたんです。「仙女」がアメリカでの大会に参戦、自分も出場することになったので、パスポートを申請していたんですね。それができたということで実家に取りに行く予定だったんです。
でも、この電話もあって、なんとなく帰りくい雰囲気に……。だけど、パスポートは必要だし、自分の気持ちは伝えたいし。それで気が付いたら父に電話をしていました。
以前にも書きましたが、父は母の再婚相手で、自分が小学3年生のときから一緒に暮らすようになりました。自分は直後に思春期に突入したこともあって、父にはどこか一線を引いていたというか、心の底からは打ち解けてはいませんでした。
電話では自分の性自認のこと、そして彼女のことをすべて打ち明けました。
父は自分の話を最後まで静かに聞くと、穏やかにこう言ってくれました。
「俺は、由加莉の気持ちが男の子だってことに前から気付いていたよ。お母さんはびっくりしているだけだから心配しなくていい。でも、少し時間はかかると思うから、何かあったらお父さんに連絡しておいで」
父が自分のことをそこまで見ていてくれたとは、驚きでした。
たとえ娘の気持ちが男の子であっても、自分たちの子どもであることに変わりはない。そう言ってくれているようで、とても心強く感じました。
母も少し時間はかかりましたが、最後は自分のことを受け入れてくれました。
意図しない家族へのカミングアウトになってしまいましたが、こういう機会でもなければ本心を打ち明けることはできなかったかもしれません。そういう意味では、おしゃべりな姉には感謝しています。
そして感謝といえば、そういう機会を作ってくれた彼女という存在です。
彼女とはその後、お別れすることになりましたが、一緒に過ごした日々は自分の中でかけがえのない大切な思い出になっています。