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 農林水産業や観光業などにも既に深刻な影響が出始めており、例えば農業であれば品種改良など、変わっていく気候に合わせた様々な対応が必要になってくる。

 しかし、地球温暖化がさらに進めば、このような対応にはやがて限界が訪れるため、どこかで地球温暖化を止めなければならないことも明らかだ。

私たち一人ひとりにできること

 国際社会は、およそ30年前の1992年に国連気候変動枠組条約を採択し、世界で協力して地球温暖化への取り組みを進めてきた。現在、条約の下での主要な国際ルールは、2015年に採択された「パリ協定」である。

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 パリ協定では、長期目標として「世界平均気温の上昇を、産業革命前を基準に2℃より十分低く抑え、さらに1.5℃未満に抑える努力を追求する」ことが合意された。世界平均気温の上昇は既に1.1℃なので、1.5℃まではあと0.4℃しかない。

 1.5℃で温暖化を止めるためには、世界の人間活動によるCO2の排出量を2050年までに実質ゼロまで減らさなければならない(脱炭素化、もしくはカーボンニュートラルとよばれる)。

 CO2の最大の排出源は石炭・石油・天然ガスといった化石燃料の燃焼なので、脱炭素化のためには、世界のエネルギー供給を、再生可能エネルギー等を中心とする、化石燃料に依存しない形に大転換する必要がある。

 地球温暖化を止めるために、私たち一人ひとりにできることは何だろうか。生活の中での小まめな節電などの心がけでは到底歯が立たない。地球温暖化対策を、面倒なこと、我慢、負担などとネガティブにとらえてしまうとむしろ逆効果だ。

 私たちにできる、より本質的な行動は、この問題に継続的に関心を持ち、社会システムの脱炭素化を加速するための政策を求め、そのような政策を支持することだろう。脱炭素化を社会システムの新時代へのアップデートと捉え、前向きに取り組むべきである。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2024年の論点100』に掲載されています。