ライブとなれば2万人規模のアリーナが即時完売し、1年間で1億円の投げ銭を集めるVTuberの世界。しかしその陰で、人気絶頂にいても突然の卒業や活動休止が珍しくない世界でもある。

  自身もVTuberとして5年間のキャリアを持つ九条林檎さんは、その理由の1つとして「喰われる」という現象を指摘する。

「喰われる」現象について「主権を自分ではなくキャラクターに奪われてしまって、キャラクターとしての自分を拒否する気持ちが大きくなり、生活に支障をきたすこと」と林檎さんは説明する。詳しく話を聞いた。

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インタビューに答える九条林檎さん

――今日はお時間いただきありがとうございます。

九条林檎(以下、林檎 ごきげんよう、我に何か聞きたいことがあるとか?

――VTuberの急な活動休止が続くのが気になっていて、その理由とも言われる「喰われる」現象について教えてください。

林檎 「喰われる」は我が発明した言葉というわけではなくてな。5年もVTuberとして活動する中で、周りで体調を崩して活動を続けられなくなってしまう方をそれなりに見てきたのだが、そういう時に「あの子、喰われちゃったみたい」というような形で我の周りで使われていた言葉なのだ。

――「喰われ」てしまうと、具体的にはどんな症状が現れるのでしょう。

林檎 周りからみてこれと分かるものは多くないが、一目でわかるほどに元気がない、というのもわかりやすい兆候の1つだな。VTuberの世界は声優業界とも隣接しているので、しっかりと挨拶をする人が多い。その中に「おはようございます……」という風に沈んだ声の人がいれば、なんらか元気がないというのは誰にでもわかるだろう。

 

――配信上では変わらず活動していることも多いのですか? そうすると中々視聴者は気づけない気がするのですが。

林檎 プロも多いので本人はやはりいつも通り振舞おうとはするだろうが、どうしても影響が出てくることはある。たとえば、マイクの付け忘れやスタート時間が後ろ倒しになったり……ケアレスミスが増えることも多い。とはいえ全くおくびにも出さない方も多いんだ、だから視聴者が外から推し測ることは基本できないと思って差し支えないだろう。

「意外と本人は原因に気づいていなくて発見が遅れたり」

――本人に自覚症状はあるのですか。

林檎 「お腹が痛い」「頭痛が増えた」、あとは突発性難聴などの症状はよく聞くな。「配信PCの前に座るとめまいがする」なんて聞くと「喰われ」かけているのではと心配になるが、意外と本人はその原因が活動であることには気づいていなかったりして、発見が遅れたりするようだ。

  共通なのは、配信上の自分を「あれは自分ではない」と拒否する気持ちが出てくることだ。配信に対する心のMPが削られるという表現をする人もいる。

――活動の中の原因って具体的にはどういうものなのでしょう。キャラクターと中の人の線引きが怪しくなってきたり?