お弁当やイタズラの「ごめんなさい」
弁当の話もかなりある。
南国市観光協会でコンクールを担当する竹中さんは「弁当はお母さんが朝早く起きて作ってくれるという認識があるので、残したりすると罪悪感が出るのかもしれません」と感じている。働くお母さんなら、なおさらだろう。お母さんの不在時、慣れないお父さんが作った弁当を、わざと忘れていったというようなものもあった。
驚くようなハガキもあった。
<お父さんへ
私が4才の時「ばれるよね」と思い。父の弁当のたまご焼きに黄色いねんどをいれました。
父が帰ってから弁当の中を見ると
ごはん1つぶも残っていませんでした!!
おちつかないまま、次の日、父は、高熱をだしました。
ごめんなさい!!>(第16回JRごめん駅長賞)
油粘土を食べたせいだろうか。それとも別の理由で高熱が出たのか。大人なら玉子焼きとの区別ぐらいつくだろうに、新作料理と思ってありがたく食べたのかもしれない。おそらく妻が作ってくれた弁当だろう。食感と味に違和感はあっても、きれいに食べた。
徳久さんは「子供の時にイタズラで、『あれをやったのは、私です』とか、『弟に罪をなすりつけていました』とか、『何かを壊して猫のせいにしました』というハガキも多く寄せられます」と話す。
<買ったばかりの車に、石で落書きをした、幼い私。
せっかくの車が、芸術作品になってしまいました。
本当に、本当に
ごめんなさい。>(第11回JRごめん駅長賞)
ギョッとするようなイタズラもあるものだ。
こうして毎年大量のハガキが届き、「後免町」は「ごめんの町」として知られていった。
行先表示灯も方向板も「ごめん」になっている
南国市観光協会の安岡事務局長は「JR後免駅のホームで『謝っている写真』を撮るのが、いっとき若い子の間で流行りました」と話す。
高知市の「はりまや橋」方面から、南国市の「後免町」駅を結ぶ「とさでん交通」の路面電車にも変化があった。とさでん交通の担当者は「行先表示灯や方向板に『ごめん』とあることから、写真を撮りに来る人が増えました。『道路の真ん中を走ってごめんと、路面電車が謝っている』などとSNSに投稿する人もいます」と語る。「ごめん」は高知名物の一つになり、波及効果は大きかった。
近年の応募数は毎年1500~2000通程度だ。内容は時代や世相を反映する。
徳久さんは「以前は『検便に弟のウンチを入れて出したら、ギョウチュウ検査で引っかかった』というようなものもありました。ウンチは『マッチ箱に入れて提出した』と書いてあったので、時代を感じさせますね」と話す。
安岡事務局長は「お姉ちゃんのお菓子を食べてごめんねというようなのも、以前はちょこちょこありましたが、最近はあまり見ない」と言う。「兄弟姉妹の関係が穏やかになってきているのかもしれませんね」と担当の竹中さんは分析する。