同展会場ではほかにも、たくさんの近藤作品と出逢うことができる。ポートレイトの連作「わたしはあなたに会いたかった」(2023年、2025年)では、老若男女にイヌやネコまでが、画面内からまっすぐこちらを見つめてくる。どの絵と対面しても、言葉ならぬ言葉によって、画面内の存在と意思をやりとりできる気がする。

近藤亜樹「わたしはあなたに会いたかった」(2023年、2025年) 展示風景

 花を描いた絵画もそこかしこにある。ポートレイトと同様、近藤の作品内では花の一輪ずつすべてが、絵の観賞者のほうを向いている。花の多くは陽の光が差すほうを向いて咲く。近藤の描く花々は、こちらを「光」と認識してくれているのかもしれず、そう考えるとなんだかうれしくなってくる。

与え合い慈しみ合う親子の「ともにある」関係性

 展示の最後を飾るのは、海と青空をバックに親子が抱き合う《Planets》(2022年)である。親が大きな手で子をしっかり抱きとめているのはわかるが、この絵では子の側も身体に似合わぬ大きな手を持ち、親の顔を優しく抱え込んでいる。この親子においては感情や愛情が一方通行ではなく、たがいに与え合い慈しみ合っていることがわかる。相手を肯定しながら「ともにある」という関係性の美しさが、具体的なかたちを伴ってここに指し示されている。

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近藤亜樹《Planets》(2022年)

 近藤亜樹の絵を前にするとだれしも、自分の内側に眠っていた感情が引きずり出されること請け合い。会場でしばし、近藤亜樹の絵画世界に翻弄される体験をしてみたい。

INFORMATION

近藤亜樹:我が身をさいて、みた世界は

水戸芸術館 現代美術センター
2月15日~5月6日

https://www.arttowermito.or.jp/