2003年に刑期を終えた前川さんはその翌年、名古屋高裁金沢支部に裁判のやり直し=再審を請求した。(第1次再審請求)

再審決定も取り消しに

2011年11月、名古屋高裁金沢支部は「関係者の供述の信用性は脆弱」として再審開始を決定した。

検察の主張が認められ再審開始決定が取り消しに

しかし、検察側が裁判所の決定を不服とし異議を申し立てると―2013年3月、名古屋高裁は「供述の変遷には合理的な理由があり信用性を失うとは言えない」などと検察側の主張を認め再審開始の決定を取り消した。

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再審開始決定の取り消しを受け、前川さんは「本当に自信をもって名古屋(高裁)に臨んだつもりです。それがこの結果に至って言葉もない」と無念を口にした。

弁護団は最高裁に特別抗告したものの、再審開始は認められなかった。

検察が新証拠を提示

前川さんの弁護団は▼関係者の供述は合理性が欠けるとする供述心理鑑定書▼供述との矛盾を示す血液反応に関する鑑定結果、などが含まれる新たな証拠を集め、2022年10月、2回目となる再審請求を名古屋高裁金沢支部へ提出。(第2次再審請求)さらに弁護団は「まだ開示されていない隠された証拠が山ほどあるはずだ」と主張。

 

これを受けて名古屋高裁金沢支部は、これまで証拠の開示を拒んできた検察側に対し、「開示命令に踏み切る用意がある」と証拠開示を強く促した。

 

すると検察側は、取り調べの供述調書や捜査報告書など新たに287点を開示。その中には▼事件発生時に前川さんと行動していたとされる関係者が当初、事件への関与を否定していた▼関係者が事件当日に見たと証言したテレビ番組のシーンが実際には放送されていなかった、といった内容が含まれていた。これにより関係者の供述は作り上げられた可能性があり、供述の信用性が疑われることになった。

2度目の再審開始決定

迎えた2024年10月23日―
名古屋高裁金沢支部は「捜査機関が関係者に不当な働きかけを行い、うその供述が形成された疑いが払拭できず信用できない。新証拠は無罪を言い渡すべき明らかな証拠といえる」とまで言及し、再審開始の決定を下した。

 

検察はこの再審開始決定に対する異議申し立てを、断念した。

 

会見で「安堵しました。ありがとうございました」と頭を下げた前川さん。ただ「再審開始を目指していたやっていたわけではなく、無罪の確定を目指してやってきました。一審の時は無罪が出て浮かれてしまったけれど、今度は確定までとどめを刺して終わりたい」と決意を新たにしていた。