法華(日蓮)宗系の仏教団体「国柱会」創立者の田中智学(たなかちがく)(1861~1939)は、法華経の布教に尽力した、「八紘一宇」の造語で有名な宗教家だ。平成17(2005)年に28歳で5代目賽主(さいしゅ)(会長)に就任した玄孫の田中壮谷(そうこく)氏が、現代に生きる“智学の教え”を説く。
江戸時代の檀家制度によって形骸化していた仏教を「衆生の宗教」として取り戻したことが田中智学の最大の功績でしょう。葬式や法事で死者を弔うだけではなく、今を生きる人々を救うための仏教こそ正しいとしたのです。また、出家はせず、在家で世俗の生活を送りながら唱題することこそ、正しい修行だとし、国柱会を作りました。
そして、「一天四海皆帰妙法」と念じ、「南無妙法蓮華経」を唱えることが、人間に与えられた唯一の救済だとも教えました。つまり、「世界中の人々がみんな法華経に帰依すれば、それですべては救われる」と主張したのです。法華経の真の教えを説いた日蓮が日本に生まれたのは単なる偶然ではなく、日本が「法華経本縁の国」だったから。従って世界に法華経を広めることが人々の救済となる。そう説いたのです。童話作家の宮沢賢治は国柱会の会員として知られており、宮沢文学には智学の思想が色濃く反映されています。

また智学はこう書いています。
〈世界を救ふといふのが日本建國の、人類同善世界一家の大理想だ。その大理想に魂を打ち込むものが法華經だ〉
法華経を中心に、地球上に生きる民族が一軒の家に住むように仲よく暮らすこと。この教えを表した言葉が、智学の造語「八紘一宇」です。
戦後、「八紘一宇」は、石原莞爾や板垣征四郎など軍人が会員だったことで、軍国主義の中心思想とされました。この言葉を肯定する発言は現在でもタブー視されていますが、これは「八紘一宇」の本質の意味を理解しようとしない人達による誤解だと私は考えています。
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