読者からのお便り 2026年4月号

ニュース オピニオン

創刊100周年の雑誌『文藝春秋』の名物コーナー「三人の卓子」。読者の皆様からの記事への感想を募集・掲載しています。このページの末尾にある入力フォームからも、ご投稿いただけます。

政治の裏側の難しさ

 3月号の『最強の参与・今井尚哉の解散戦略』(赤坂太郎)を読みました。今回の突然の衆院解散に至るまでの状況が時系列で記され、衆院選を振り返ることができました。その一番の謎(突然の解散の理由)は、「高市を心変わりさせたのは予算委員会への不安だった」というところから始まりました。1月10日、新聞の朝刊一面で「首相、衆院解散検討」という横書きの大きな活字の見出しに、朝の眠気が吹っ飛んだことを忘れません。スクープか、それとも勇み足かと不安が頭を過りましたが杞憂でした。

 衆院選の日程が明かされました。一番驚いたのは立憲民主党と公明党の合流です。両党ともに退潮傾向を認めていました。

 一方、与党維新は「副首都構想」実現のため大阪府知事と大阪市長のW選挙。そして最後まで苦心したのは高市首相の執着する政策です。「食料品の消費税率は0%にすべき」というのです。党内の綱引きの結果、「検討を加速させる」という表現に落ち着いた経緯に、政治の裏側の難しさを垣間見ました。

 最後に筆者は「この策を打ったのは国民のためだったのかどうかだ。約850億円も費やした総選挙の結果、溺れることになるのが、日本国民であってはならない」と言明しました。浮かれることなく、「働いて、働いて」公約の政策実行あるのみと理解しました。

(愛知県 松坂年造)


異次元緩和の自己評価

 3月号、黒田東彦氏と成田悠輔氏の対談『いまは金融も財政も引き締める時です』を拝読した。この対談では前日銀総裁による異次元金融緩和10年間の自己評価が垣間見られるか、関心があった。

 この点に最も接近したのは「10年強を振り返って、予想外だったことは何でしょうか」という成田氏の質問であった。黒田氏の答えは「これだけ金融緩和したのに物価が変わらなかったこと」で、その原因は「デフレマインド」だったとされた。さらに、その間に生活者の豊かさが低下したことが「黒田さんのせいである」という声があるとの指摘には、「それならあなたの金融政策を示してください」と応じると述べられた。

 確かに異次元緩和が始動した頃、黒田氏の金融緩和政策には合理性が認められ歓迎もされたと記憶している。しかし異次元の金融緩和は、アベノミクスの三本の矢である金融緩和、財政出動、成長戦略の中の一本で、三本を同時に機能させることがアベノミクスの戦略だった。だとすれば、物価が上がらなかった原因はデフレマインドだけではなく、金融緩和以外の二本の矢の成果にも影響された可能性が考えられる。

 そして今、高市政権が目指している責任ある積極財政と成長戦略は、まさにその二本の矢に相当するかのようだ。しかしアベノミクスは本来デフレ対策なので、現下のインフレでは逆に「金融も財政も引き締めるべき」であると黒田氏は述べられており、とても興味深かった。さて黒田氏の自己評価だが、少なくとも及第点のようである。

(東京都 高見佳宏)


柏崎刈羽原発を考える

 新潟県の柏崎刈羽原発が首都圏への送電を開始した。14年ぶりだったが、地元住民の原発再稼働への思いは今も大きく揺れている。その状況下での3月号『柏崎刈羽原発「再稼働工作」の内幕』(森功)は、考えさせられることが多かった。

 柏崎刈羽原発は、原子力規制委員会の審査に合格した後、地元の同意が得られたとして再稼働された。だが地元の新潟では、度重なるミスや不祥事により東京電力へ不信感を抱いていた上、新潟県知事の県議会での信任だけでは不適切として、再稼働後も議論が続いている。再稼働ありきの政府の前のめりの姿勢にも不信感があり、事故時の避難計画が不透明と心配する人も多い。

 今回の大成建設元会長へのインタビュー記事は事実に基づいたものだった。東日本大震災後の初期からの、政府による柏崎刈羽原発再稼働に向けての働きかけであり、感情的には、世論や住民感情を軽視した計画として許容できない部分もあった。だがこういう原発工事の建設現場についての状況がもっと地元に知らされていれば、住民と東京電力や政府・県との協議ももっと感情的ではなく建設的にできたのではないかと思う。

 新潟では、なぜ東京電力圏外の地域に原発があるのかという素朴な疑問もあるが、安全性さえ確保できれば、国全体の電力事情や地元の経済活性化のために再稼働を容認する声も多い。今回の大成建設の工事の実態記事は地元民に信頼感を与えられるものになり得ると思った。

(新潟県 田中仁)


刻印

 3月号に掲載された芥川賞受賞作、鳥山まことさんの『時の家』は癒される小説だ。読み始めたときは、正直疲れそうだなと思ったが、次第に惹き込まれていった。

 ひらがな、カタカナ、漢字のバランスがよいこの小説を視覚的に捉えた時、私には短冊に書かれた短歌の連なりに見えた。現代詠と建物回想は異なるが、記憶を刻む点は、短歌と共通する。

 たとえば、坂本龍一の多くの曲は、派手さはないが、やさしい旋律が繰り返され、聴く者に大きな感動を与える。最後のピアノ・ソロは、魂の全てを刻み込むような演奏であった。『時の家』の青年がスケッチしている姿は、これと重なる。藪さん、緑、土の字が二つの圭さんという自然の名前が、人生とともに建物の記憶に溶け込んでいく。

 丁寧な線描は、木下晋の鉛筆画を想起させる。そして、E=mc²の美にも似た哲学的結論〈家は時の幹〉に至る。

 子どもの頃にお世話になった病院を、約20年ぶりに訪ねたことがあった。随分と様変わりしていたが、緑と赤の矢印型エレベーターボタンが残っていて、涙が溢れた。たとえその時つらい経験をしていても、建物の記憶はかけがえのないものだ。

 最近、老朽化を理由に、多くの建物が解体されている。京町屋、団地などは、なるべく保存・活用してほしい。鳥山さんの出番だ。

(滋賀県 吉田達郎)


「端正」な北陣親方

 3月号『元小結・遠藤「やり切る、抗う心」を語る』(北陣聖大、取材・構成 田井弘幸)を拝読しました。

 こうして雑誌のインタビューで心情を吐露することも、今後北陣親方として生きていく上では必要不可欠ではないでしょうか。ベールの向こう側を少しでも知ることができると、現役時代の熱狂にも勝る応援の声が、一層親方を包み込むことでしょう。

 私が初めて遠藤関を拝見したのは、今となっては奇しくも、現役最後の2025年5月25日千秋楽、両国国技館関係者通用口でした。出待ちをしていたところ、通用口から颯爽と現れた遠藤関の、美男子、男前という表現ではなく「端正」と表される佇まいに見惚れました。取組後に、紺青の地に赤で鯛や恵比寿様、遠藤の文字が染め抜かれた大漁旗の着流しで、その場に居合わせた人々が響(どよ)めく程美しく、この力士があの国技館を熱狂の渦に包んだ遠藤関だと目を見張りました。

 5歳くらいの子どもたちにサインをした直後、ふと国技館の青銅色の屋根を振り返った表情に私は「有終の美」を感じてしまったのです。

 土俵人生は「幸」の一字と語るが如く、引退会見での満ち足りた神々しい姿は深く私の脳裏に刻まれました。明日の土俵への不安な気持ちから解放され、幼き日のクリクリした愛らしい瞳の少年と故郷を想う北陣親方が素直に結びついたのです。

(東京都 蛭間マサ子)

▶︎昨年夏場所千秋楽で9勝目を挙げた後、当時の遠藤は色鮮やかな浴衣に着替えた後も支度部屋にしばらく残り、穏やかに話し続けました。寡黙な力士の見慣れない姿は名残を惜しむようにも感じられ、その場にいた私も「もしかしたら…」と胸騒ぎを覚えたものです。インタビューでの全てを出し尽くした笑顔は、あの初夏の夕方と同じように輝いていました。(田井弘幸)


川田さん、ありがとう

 私は山形出身で、温暖化の影響で樹氷が小さくなっているといわれ、心配していました。3月号のグラビア特集『そびえたつ樹氷』では、変わりゆく樹氷の姿が写真で記録されているのを、とても嬉しく拝見しました。時代ごとに“氷の彫刻”の作品を、川田勘四郎さんの解説と共に見たくなりました。

 およそ30年前、上京する前に見ておこうと、樹氷群を見に行きました。寒さの中で見る壮大なスノーモンスターの迫力に「さっぽろ雪まつりのような作り物より、天然の方が凄い」とふるさとを見直したものでした。

 四季のある日本は厳しさもありますが、神が与えてくれた賜物ともいえる自然の美しさの前では、「人間はなんてちっぽけなんだろう」と謙虚な気持ちになります。

 川田さん、是非これからもスノーモンスターを写真で残し、未来へ伝えてください。

(東京都 佐藤仲由)

▶︎半世紀以上にわたる川田さんのお写真は、観る者を惹きつけてやみません。美しい色味を誌面でどう表現するか、印刷所と何度も協議を重ねました。(担当編集より)


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