〇〇と額面通りは使いよう

第20回

山田 詠美 作家

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 アメリカを揺るがすセックススキャンダルが報道されて、何故か「海の向こうで戦争が始まる」by村上龍……と、久々に龍さんの一九七七年発表の第二作目の題名を思い出したのは、ジェフリー・エプスタインのドキュメンタリーを観たからなのだった。

 今さら説明するまでもなく、これは、投資家で大富豪のエプスタインが少女の性的人身売買などの容疑で、逮捕、その後拘置所内で自殺。後に、有力者や王族、著名人たちへの売春斡旋疑惑が浮上し大スキャンダルへと発展した経緯を追ったフィルム。共犯者で恋人のギレーヌ・マックスウェルの側から描いたものもある。まあ、一蓮托生というか同じ穴の狢(むじな)というか。良くない方向に行った性のエネルギーって、ものすごいパワーで道徳やら倫理を破壊するんだなあ、と観ていて思った。

 冷静に考えたら、これまでの自分のすべてを破滅に導くのが解る筈なのに、歯止めの掛からなくなった性欲は常識をなぎ倒して暴走し続ける。

 実は、私は、いつも欲望という代物について考えているのである。とりわけ「性欲」は、我慢出来ずに一線を越えて「罪人」になってしまう有名人の例などを知るにつけ、これって、文学に投げかけられた大命題ではないか、と思ってしまうの。解明は出来なくとも、アプローチはしてみたい、と。

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source : 文藝春秋 2026年6月号

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