サイエンスライターの佐藤健太郎氏が世の中に存在する様々な「数字」のヒミツを分析します。
今回の数字:モンスター群の属する次元=196,883次元
新型コロナウイルスによる犠牲者は、とどまるところを知らず増え続けている。そして4月11日、その列の中に数学者ジョン・ホートン・コンウェイの名が加わってしまった。
「マセマジシャン」(数学者と魔術師の合成語)とも呼ばれた彼は、いたずら好きでカリスマ性に溢れ、様々な小道具を用いて数学の世界を楽しく語ることに長けていた。あるジャーナリストはコンウェイを指して、「アルキメデスとミック・ジャガーとサルバドール・ダリとリチャード・ファインマンを混ぜ合わせて一つにしたような人物」と表現している。
彼の業績で最も有名なのは、「ライフゲーム」の開発だろう。コンピュータ画面上の1群のドットが、一定の規則に従って増減するだけのごくシンプルなものだが、その成長と減衰の様子は予測不可能で、見る者を魅了せずにおかない。1974年には「タイム」誌が、「ライフゲームの大群が、数百万ドルの貴重なコンピュータ資源を食ってしまっている」と報じたほど、このゲームは数学者たちを熱狂させた。
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source : 文藝春秋 2020年6月号